金の輪

□03
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―――二年後。


「アバレウミガメが出たぞーー!!」

「今夜は祭だぁっ!!」

「一年振りだ!一年振り!!」


シンドリアに巨大な南海生物が現れ、国民達は怯えるどころか喜んでいた。


ドーン ドーン ドーン―――


ドラの音が大きく鳴り響き、10人の人影が現れた。


「来た!!
我らが国王シンドバッド様だ!!」

「八人将の皆様と…巫女様もいらっしゃるっ!!」


現れたのは国王シンドバッドと八人将のジャーファル、マスルール、ヤムライハ、シャルルカン、ピスティ、スパルトス、ドラコーン、ヒナホホ、そしてシンドリアで巫女と慕われるノーラだった。


「王サマ、今回は誰が行くんすか?」

「そうだな…、よし!ノーラ今日は君が行ってくれ!」

「私ですか!?」

「今のノーラならきっと大丈夫だ。」

「…わかりました…!」


意を決して返事をしたノーラは履いていた靴を脱ぐと脚にルフの力を溜め、アバレウミガメのもとへ跳んだ。


シンドリアに来てから、ノーラは戦闘力をつけるために八人将の一人、ヤムライハに魔法の指導を受けた。

しかし、ノーラには才能があるものの戦闘向きの術は何故か使えなかった。

考えた結果、巫女だから人を傷付ける恐れのある術は使えない…その答えに行き着いた。

次にシャルルカンやスパルトスに指導を受けたが、ヤムライハの時と同じようにうまくいかなかった…。



――スタッ


ノーラはアバレウミガメの目の前に着地し、頭を下げた。


「…あなたの命を国のために奪うことをお許しください。
その命、決して無駄にはいたしません。」


アバレウミガメは目の前にいるノーラを踏み潰そうとした。

しかしノーラは片手でそれを防いだ。

その手はルフの光に包まれていた。


「ごめんなさいね。」


ノーラはそう言うと高く跳び、舞うようにアバレウミガメの首、甲良、後ろ足、腹、胸、前足に自らの手や足で触れた。

周りから見れば、アバレウミガメに大した効果はないように見えるがアバレウミガメはピクリとも動かない。

否、動けないのだ。

魔法も剣や槍を使った戦闘もうまくいかなかったノーラは考えた。

巫女は人を守らなくてはいけない。

ならば、“守る”戦いをすればいい。



――トン


最後にアバレウミガメの頭を軽く叩くとアバレウミガメはゆっくりとその場に倒れた。


ノーラの戦闘方法は“守り”

だがその守りはただ人を守るだけではなく、攻撃にも使う。

ルフが多くあるノーラは魔法向きだった。

攻撃魔法は使えないが、結界魔法はノーラの得意分野となるほどうまかった。

ノーラの作る結界魔法は対象に触れればその体内にも作れる。

ただし、自分と対象の肌が直接触れなければ効果は無い。

体内に結界をつくると言うことはその細胞に血液や栄養などが送られることを阻止すると言うこと。

つまり、体内から壊していくと言うことだ。

心臓や脳に結界を作ればすぐ死にいたる。

足の筋肉に結界を作れば力が入らなくなり、足止めすることが出来る。

これがノーラの戦い方だ。

そして修行をしている内に気付いたことがあった。

ノーラはルフの力を脚に溜めれば脚力が上がり、手に溜めれば腕力が上がる。

このお陰で体力の少ない魔法使い向きのノーラでも武術を習得することが出来たのだ。


倒れたアバレウミガメを見た国民は歓声を上げ、アバレウミガメの解体に取りかかった。


「ノーラ、お疲れ様!」

「さすがノーラね!
すごい結界魔法だったわ!!」


国王と八人将のもとへ戻ると、ピスティとヤムライハが駆けつけた。

ヤムライハはノーラの結界魔法の出来に興奮して抱き付いた。


「本当?よかった…!」

「魔法バカ、ノーラにもそのバカさうつすつもりかよ。」


ヤムライハのことを魔法バカと呼ぶ人物はこの国には一人しかいない。

声をかけてきたのは八人将の一人シャルルカンだ。


「うるさいわねー!!
脳みそまで筋肉になるからこっち来ないでよ、しっしっ!!」

「テメッ!!」

「はいはいストップ!
シャル、解体手伝ってきたら?みんな苦戦してるみたいよ。」


ノーラが目で倒れたアバレウミガメの方を指すと、シャルルカンは喜んでそっちに向かった。


「ノーラ、シャルの扱い慣れたね〜!」

「扱いとは…動物みたいだな…。」


ピスティの横に来たのはスパルトスだった。


「ね、ね!
みんなで見に行こうよ!」

「そうだな。」

「あ、私はシンのところに行かないと。」

「じゃあ、あとでねノーラ!」


ヤムライハ、ピスティ、スパルトスと別れたノーラは、シンドバッドのもとへ行った。

そこにはジャーファル、マスルール、ドラコーン、ヒナホホもいた。


「ノーラ、お疲れ様です。」

「初めてだから緊張しました。」

「見事だったぞ、ノーラ!」

「あぁ、腕を上げたな。」


ノーラはジャーファル、ヒナホホ、ドラコーンににこやかに声をかけられ、マスルールに頭を撫でられた。


「ノーラ。」


声のする方を見れば笑顔のシンドバッドがいた。


「ご苦労だったな。
上出来だ!」

「巫女ノーラ、王の期待に添えたこと嬉しく思います。」

ノーラは膝をついてシンドリアの礼をとりながら言うと、にこりと笑った。

その笑顔を見てシンドバッドも笑顔をかえす。


「よし!今夜は特別に一番にノーラを俺の膝に乗せてや…」
「乗りません。」


さっきとは一変、ノーラは冷めた目できっぱりと断った。


「マスルール君も下に行きましょ!
力仕事ありそうだし!」

「あぁ…。」


ノーラは脱いであった靴を履き、マスルールを誘った。


「それじゃあ、ジャーファルさん、ヒナホホさん、ドラコーンさん失礼します!」

「えぇ。」

「気を付けろよ!」

「楽しんでこい。」

「え、ノーラ俺は!?」


ノーラはシンドバッドのことを無視し、マスルールの肩に乗せてもらうと下へ下りて行った。







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