愛憎

□.
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03


「はい、私の勝ちー
毎度ありー」

「だぁぁ!!!」


エリザの出したトランプの札を見て、トランプを投げ出し床に寝そべるシャチ。

エリザはシャチから金を受け取りしまう。


「エリザは強いな!」

「シャチが弱いんだろ…」


2人の勝負を見ていたベポとペンギンがそれぞれ思いを口にする。



エリザがハートの海賊団の船に乗せられてから、何人かの船員が顔を出すようになった。

自分達の船に賞金稼ぎ…しかも女が乗っているとなれば気にもなるだろう。

見張り役はベポのことが多かったが、次第に代わっていった。

船員の中にはエリザを“女”として見ている者もいたが、エリザが蹴散らしたことによりその考えをする者はいなくなった。

ちなみにその蹴散らした相手とは今エリザの目の前で寝そべっているシャチだったりする。





ーーコンコン


「ベポ、見張り交代なー」

「アイアイー
じゃあなエリザ!」


手を振り部屋を後にするベポ。

エリザは交代だと入ってきた男、シャチを特に気にするとこなく読んでいた本に目を戻した。

しかし視線を感じる。


「………何…?」

「いやー……お前ってさ、スタイルいいし顔もキレイだしさ………賞金稼ぎ以外にも娼婦の仕事とかやってねぇの?」

「………。」


ーーガッシャァァン!!


直後、エリザの仮部屋から凄まじい音が聞こえた。

何事かと皆が集まるとそこには部屋の前で壊れた扉と共に伸びているボロボロのシャチと、何食わぬ顔で本を読み続けるエリザの姿があった。





「でもよく船長が何も口出ししなかったよな…」

「悪いのはシャチなんだから当たり前よ
まぁ…壊した扉の金は払えって言われたけど…」


エリザは珍しそうな顔で言うペンギンにそう答えた。

騒ぎがあった時、勿論ローもその場に来たがエリザが簡単に話をすると面白そうに笑った。

相手の実力に気付かなかったシャチの自業自得だと言ったが、扉の修理代を請求されたのだ。

エリザは今までシャチからカードで儲かった金を見ながらこんなもんか…と呟いた。


「もしかしてお前…その金……」

「扉の修理代よ」

「俺の金じゃねーか!!!」

「“元”ね…」

「アイー…エリザ、そんなにシャチに勝ってたのかー」


まさかと思いペンギンが口を開くと案の定エリザは修理代だと言った。

何回かカードの賭けをシャチにうまいこと言って参加させて稼いでいたらしい。

その全てにエリザが勝っているようだ。


「俺の金が………。お前は鬼かっ!!」

「正当な勝負よ?
盗まないだけいいと思いなさいよ…」


盗む選択もあったらしいエリザの発言にシャチはやっぱり鬼だー!と叫ぶ。

ペンギンも苦笑いだ。


「海賊が何言ってるのよ…
本当はこの船の金品盗んだってよかったのよ…犯罪者から盗んだって罪にはならないからね
でも私は今下手に動けない……よかったわね、トラファルガーが私の心臓を奪っていて…」


先ほどまで笑っていたペンギンも流石に冷や汗を流す。


「ねぇ、そろそろ外に出してくれないの?
ずっとこの部屋か風呂場にしか行っていないのだけれど…」


外の空気が吸いたいとエリザはペンギンに抗議をする。

しかし、船長であるローの許可が下りなければエリザは自由に動けない。


「じゃあ俺がキャプテンに許可貰ってくる!」


そう言うとベポは勢い良く部屋を飛び出した。

ベポの表情はとても楽しそうだった。


甲板でエリザと一緒に昼寝や釣りをしたいのだろうとシャチが笑いながら話した。
こんなにベポに懐かれてしまってエリザは少し胸が痛んだ。

自分は賞金稼ぎであり、今は一時的に船に乗っているだけの身。

なによりエリザは海賊が嫌いだった。

賞金稼ぎを始めた理由もそれだ。

ドスドスと遠ざかったはずのベポの足音が近付いてきた。


「何だ?もう聞いてきたのか?」


ペンギンが不思議に思っていると勢い良く扉を開け、ベポが叫んだ。


「ペンギン!シャチ!敵襲だよ!!」






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