愛憎

□.
8ページ/10ページ

18


「エリザー!次こっちだよ!」


ベポに呼ばれエリザは箒と雑巾の入ったバケツを持って移動した。

エリザ達は今船内の掃除中だ。


「船員室ね…。」


この男だらけの船の男だらけの部屋がキレイな訳がない。

広さもあって大変だろうが、エリザは掃除のやりがいがありすぎるだろうと覚悟した。


「あれ、お前ら掃除か?」


昼食をすませたクルー達がぞろぞろと歩いてきた。


「そうよ。」

「ま、頑張ってなー!」


にやにやと笑いながら去ろうとするクルー達に少々頭にきた。


「ぴっかぴかにしてあげるから期待してなさい。
女の私がゴミと判断した物はとことん捨てるからキレイになるでしょうね…。」

『………。』


その言葉にピタリと足を止めるクルー達。

ガチャ…とドアが開きベポがなかなか入って来ないエリザの様子が気になって顔を出した。


「エリザどうしたんだ?」

「何でもないわ。さっそく始めま…」
「あーあーあーエリザさん?」


エリザの肩に手を置き止めるシャチ。

全てをわかった上で何か?といった顔をして振り返り、首を傾げる。


「ゴミと判断するものとは…?」

「ゴミはゴミよ。
そうね……よくベッドの下に隠してる様な本……とか?」


考える素振りをしながらチラッと横目でクルー達に目を向けると冷や汗を流していた。

彼らの頭の中には自分の持ち物の本が浮かんでいるだろう…俗に言うエロ本が。


「な、なんか急に掃除したくなってきたなー!」

「め、飯も食ったことだし食後の掃除でもしよっかなー!」


ペンギンとシャチの発言に他のクルーも何か適当な理由を付け始めた。


「…と言うわけで!
エリザ、お前掃除しなくていいぞ…!!」


両肩をがしっと掴み必死に話すシャチにエリザは勝ち誇った顔になる。


「あらそう?
そんなに掃除がしたいなら後はお願いするわ。あと、トイレと風呂場掃除も残ってるからよろしくー。」

『なにぃぃー!!??』


手をひらひらと振ってエリザはベポとともに昼食を取りに行った。

悔しがるような呻き声が響いていたがそんなことは知らない。



昼食を取った後、エリザは部屋へ着替えに来ていた。

次の島は夏島らしくだんだんと気温が高くなってきたのだ。

あまり目立たなくなった体中の傷。

今まではなかなか半袖は着なかったが今は着てもいいかもしれない。

ローに少し感謝しながら半袖のTシャツに袖を通した。


「敵襲ー!!」


クルーの声が聞こえ、脱いだパーカーはベッドの上に放り投げる。

相手は海賊だという情報を聞いた。

海軍ではない時は戦闘員として戦う約束のため、エリザはライフル銃を肩に掛け甲板へ向かった。

重たいドアを開け甲板へ出た時、

エリザは息が止まった。

音を立てて肩からライフル銃が落ちる。

横からベポの不思議そうな心配そうな声が聞こえた気がしたが、とても遠くに聞こえた。

近付いてくる海賊船。

その帆に描かれているジョリーロジャーは見覚えがあった…。


「船長ー!女がいますよ!」

「そりゃいい!
あ…?あいつ…どっかで……」


海賊達の視線を感じる。

嫌な汗が背中を流れ、呼吸がしづらい。


「おい、どうした…」
「あー!!あいつ!!昔船にいた女だ!!」


ローがエリザの異変に気付き声をかけた時、1人の男がエリザを指差して叫んだ。


「ん?…あぁ!あの女か!!」

「あんときゃまだ餓鬼っぽかったが、今はえれぇ美人じゃねぇか!!」


次々と相手の海賊達はエリザのことを思い出し、口々に話し出す。

そんな状況にハートのクルー達も不思議そうにエリザのことを見ていた。


「お前、今度はこの船で飼われてんのか?」


その一言にエリザの体が一瞬震えたのをローは見逃さなかった。






次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ