愛憎

□.
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島に停泊してから4日が経った。


「エリザー!」


黄色いハートの海賊団の潜水艦の前でハイラがエリザを呼ぶ。


「エリザー呼ばれてんぞー。」

「今行く!」


ペンギンに呼ばれ、いつものつなぎ姿ではないエリザが船内から出て来た。

黒いチュニックにデニム姿のエリザはライフル銃が入った大きな鞄を肩にかけていた。


「私服なんて珍しいな。」

「なんかハイラに怒られたから…。」

「何でライフルなんて持ってくんだ?」

「職人に見てもらうのよ。」


そう言ってエリザは楽しそうに船を下りていった。

残されたペンギンとシャチはエリザの普通の女の子らしい表情を見て少し悲しくなった。


「……なんて顔してんだお前ら…。」

「「せんちょー…。」」


後から現れたローに泣きつく勢いでペンギンとシャチは理由を話した。

この島にきてエリザは普通の女の子のように楽しそうにしている。

ハイラとも仲の良い女友達になり、笑顔が増えた。


「……だからどうした。」

「だからですね!このままエリザを海賊にしてていいのか不安になるんですよ!!」

「もしかしたらこの島に残る!…なんてこと言うかもしれないんですよ!!」

「そんな心配するくらいなら掃除でもしてろ…。」


そんなことを冷静に言ったローだが、シャチやペンギンが心配する前からローはそのことを気にかけていた。


「(この島に残る…か……。)」




ーーカランカラン…


ドアに付いたベルが鳴る。


「オプロおじさーん!いるー?」


小さな店内は壁にも天井にもいろんな武器が置いてあった。

見た目は普通だがどれも仕掛けがついているようだ。


「ハイラとエリザじゃねぇか!」

「シト!」


店の奥から出てきたのはこの島で仲良くなったシト。

話によるとこの店のオプロと言う男はシトの父親だそうだ。

以前シトが使っていた短剣の仕掛けも父親から習い、自分で作ったそうだ。


「今日は何しに来たんだ?」

「私の武器を少し見てもらおうと思って。」

「シトの短剣見てすごいって思ったらしいよ〜!よかったじゃん!」

「お、おぅ…。」


ハイラがからかうように言うとシトは照れて頬をポリポリかいていた。


「おぉ、ハイラちゃん待たせたね。」


シトの後ろから白髪混じりの眼鏡をかけた男が現れた。


「おじさんこんにちは!
もう知ってると思うけど、この子がエリザ!
エリザ、シトのお父さんのオプロさんだよ!」

「こんにちは。この島一番の職人とお聞きしました。」

「いやいや、島一番だなんて照れるねー。」

オプロもシトと同じ様に頬をポリポリかいて照れている仕草を見てエリザはくすりと笑った。


「?」

「あ、すみません。シトと同じ仕草だったのでつい…。」

「あー!確かに!!」

「げっ…!俺、親父と同じことしてたのか!!」

「げっ!とは何だ!!」


和やかな雰囲気にエリザは心が暖かくなった。

家族や友人と普通に暮らしていたらこんな感じだろうか…?

ふとエリザの頭にそんな考えが浮かんだ。


「それじゃあ早速エリザちゃんの武器を見せてもらおうかな?」

「はい。」


エリザは鞄の中からライフル銃、2丁の拳銃2本のダガーナイフを取り出した。


「ふむ…使い込んでいるね。」

「賞金稼ぎをやっていた時からずっと使っていますから。」

「お前賞金稼ぎやってたのに今は海賊やってんのか!?」


初耳のシトは驚きに声を上げる。


「では随分長いことこの武器を使っているのかね?」

「はい。5年ほど使っていると思います。
やっぱりガタがきてますか…?」


少し不安そうにするエリザにオプロは微笑んで言った。


「いいや、とても丁寧に手入れされているから大丈夫だよ。」

「そうですか、良かったです。
あの…相談なんですが……」


ーーーー
ーーー
ーー



店を後にし、エリザはハイラとドリンクを飲みながら小さな広場にあるベンチに腰掛けていた。


「ハイラ、あなたナイフを持っているけどシト達と一緒に賞金稼ぎの仕事しているの?」

「私がナイフ持ってるのよく気付いたね!!」


ハイラは驚きながらブーツに隠していたナイフを取り出した。


「うん、時々手伝ってるよ。私は脚力が自慢なの!!
シトはあの短剣使って木の上飛び乗ったりしてるねー…猿だなありゃ。」


2人で笑い合いお互いの話をいろいろした。

そこでエリザはあることに気付く。


「ねぇ、ハイラ。あなたってシトのことが好きなんじゃないの?」

「ぶふっ…!!」


ドリンクに口を付けていたハイラは思わず吹き出す。


「な!ななな何をいきなり言い出すの!?」

「あ、やっぱり…?
シトの話が多いと思ってたのよ。」


くすくす笑うエリザにハイラは顔を真っ赤にした。


「そう言うエリザだってトラファルガーのことが好きなんじゃないの?」

「ぇ…?」


固まってしまうエリザにハイラもエリザ自身も驚いた。


「え!?うそ!!冗談だったのに!!」

「え?冗談よ…うん…。」

「いやいや、エリザ動揺してるからね。」


明らかにエリザは態度と表情が動揺していた。

お互いの想い人がバレてしまい、エリザもハイラも赤い顔のまま黙り込んでしまうのだった。






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