novel『イナGO』vol.1

□『Everlasting』
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「で、お前は何が言いたいんだ?」

眉間の皺を悟られないように。
身長差を利用して、剣城はやや上空を仰ぐ。

夏に近い陽射しが眩しい。

爽やかに澄んだ、鮮やかな真っ青な夏色。

時折吹き抜ける。
一足早い生温い一陣の風が、優しく頬を撫で過ぎる。

「うん・・・」

肌で感じる心地好い気候とは裏腹に。

どこか思い悩む様な。
少し沈んだ、隣人の声。

剣城の眉尻が、無意識にピクリと跳ねた。

「俺の決められた時間って、どのぐらいあるのかな・・・とか考えちゃって」

深刻に伏せられた深青の瞳が。
すぐさま。

「らしくないよね」

アハハ。
誤魔化し笑いに歪んだ。

今にも泣きそうな、それこそ天馬らしくない無様な笑顔に。

胸がキュッと軋んで。
痛んだ。

天馬が何を思い、何を感じているのか。
分からなくて。

でも、衝動的になりそうな感情を。
懸命に押さえ付ける。

「誰でも、一回は考える事だろう?」

不安に駆られるお前は、ちっともおかしくなんてない。

「だから、安心しろ」
「・・・剣城」

頭一つ分低い位置にある。
フワフワした飴色の頭を、少々強引にガシガシと撫で回してやった。

「痛い!痛いよ、剣城!!」

もうっ!!
両頬を膨らませて、無言の抗議をする天馬を見て。

「お前は余計な事、考えなくていいんだよ」

「・・・でも」

反論を言いかけた天馬の口唇前に。
剣城はスッと人差し指を宛行う。

「一度だけしか言わないから、よく聞けよ」
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