novel『黒執事』vol.1短編
□『ST.Valentine's Day』
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「最後に、セバスチャン」
「え?私にも、ですか?」
当たり前だろうが。
と、僕は怪訝に眉を寄せる。
「それとも、要らないのか?」
意地悪く尋ねると、セバスチャンは困った様に笑んで。
「いえ。是非戴きます」
と、頭を下げた。
正直、セバスチャンは甘い物があまり好きではないのを知ってる。
かと言って、仲間外れにしてもいけないだろうと。
これでもアレコレ考えたのだ。
甘すぎず、かつセバスチャンが好みそうな味を。
「セバスチャン」
「はい」
セバスチャンには黒いリボン・・・とも考えたが。
それはあまりに似つかわしくない、と気づいて。
瞳の色にちなんで、真っ赤なリボンにしてみた。
中身のチョコレートの見た目は、バルドのブラックチョコレートと変わらなくも思う色合いをしている。
が、そこまで苦くもなさそうだ。
「これは、何味なのですか?」
表情には出さないが、どうやらセバスチャンも他の使用人同様にワクワクしている様子で。
何だか癪に障る気がしたから、少し遊んでやる事にした。