novel『黒執事』vol.1短編

□『ST.Valentine's Day』
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「お前のは、猫味だ」
「・・・、は?」

「猫味」
と、ニヤリ、繰り返す。

が、そんな僕に気の抜けた返事しか返せないセバスチャンに。
更にトドメ。

「猫、好きだろう?」
「・・・・・・・・・」

言葉も出ないらしい。
と、ほくそ笑んでいたら。

こっちに背中を向けたかと思うと、しゃがみ込んで。
ホトホトホト・・・なる擬音がピッタリな涙を零して、絨毯に”の”の字を書き始めた。

「・・・なっっ?!泣くなー!!」

いい大人が・・・ってそんな問題じゃなくて!!
猫味なんて有る訳ないだろうがっ!!
ジョークに決まってるだろう!!

それが分からない様な存在(ヤツ)ではない。
いつもなら、鼻で一笑されて終わるのだが。

冗談をここまで真に受けられたのは初めてで。
かえって焦ったのは、僕の方だったりして・・・

「あー、セバスチャンさんがいじけてる!」
「駄目ですぜ、坊ちゃん。セバスチャンを虐めたら」
「・・・でも、泣いてるセバスチャンさんって・・・可愛いかも・・・」

好き勝手言ってる三人に、更に弄られるセバスチャン。

普段には有り得ない光景なせいもあって。
・・・良心が痛んだのもあって。

「これにて解散!!」

踞(うずくま)るセバスチャンを残して。
皆の背を強制的に押し出す様に、そそくさと広間から撤退したのだった。

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