novel『黒執事』vol.1短編
□『ローズガーデンの番人』
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「さて、と・・・」
(今日の朝摘みの薔薇は、どの品種にしましょうか?)
朝露を含む花弁は、どれも艶やかで。
思わず、惚れ惚れと感嘆の溜息が零れる。
丹念に手間を掛け、世話をしているのは自分自身なのだから。
見事だ、と自画自賛したくなるのも無理はない。
(本日はコレにしましょう)
スッ、と手を伸ばした先には・・・
黄色からバフイエローへと変化途中の、イングリッシュ・ローズ。
黄色のしべを見せながら、可愛らしく咲くオープンカップの花。
コンテ・ドゥ・シャンパーニュ。
白に近い淡いピンク色の、オールド・ガーデン・ローズ。
最も初期のアルバローズで、別名”キュイス・ドゥ・ニンフ(妖精の腿)”と呼ばれている。
グレート・メイデンズ・ブラッシュ。
白にピンクのぼかしが入っている、オールド・ガーデン・ローズ。
スリムな枝に蝶が舞うかのように咲く、ティッシュをくしゃっと丸めた様な美麗花。
オメール。
涼しい時期には弁端がブラッシュピンクへと変化する、カップ咲きのオフホワイト、イングリッシュ・ローズ。
刺は少なめで、ショートクライマーとして使用出来る。
ローズ・マリー。
そして、セバスチャンが最も大切に育てている白薔薇。
純白の半八重房咲きの芳香種、系統はイングリッシュ・ローズ。
繊細で清楚な花だが、見た目とは裏腹で強健。
名前は、ブラン・ドゥブル・ドゥ・クベール。
セバスチャンにとって、この品種だけは特別。
まるで、誰かさんにそっくりで。
一目見た時から、気に入ってしまった。
今では、並々ならぬ愛着を注いで育てている一品だ。