novel『黒執事』vol.1短編

□『ローズガーデンの番人』
3ページ/10ページ


大切に、大切に。
慈しむ様に、優しく。

気高さの中に、脆さや儚さ。
そして、弱さや寂しさを秘めた。

若干13歳で裏社会に君臨する、幼き孤王。
シエル・ファントムハイヴ。

その身にのし掛かる重圧。
癒えない痕跡と、背負う宿業。

押し潰されそうな要素に塗れながらも、果敢に立ち上がる勇姿に。
一人の悪魔は魅了されてならない。

シエルとの出逢いからの軌跡によって。
セバスチャンの内心は翻弄されてばかりで。

それはそれで癪なのだが。

愉悦で満ち満ちているのも、真実で。

”愛しい”
なんて、口にしたら。

どんな反応を見せてくれるのだろうか?
あの幼子は。

そう考えるだけで、毎日が楽しくて仕方ない。

自然と笑みが深くなるのを感じながら。
使い慣れた懐中時計の蓋を、軽く弾いた。

「そろそろ帰って準備をしなくては・・・」

仕える主人・シエルに朝を告げる為。

セバスチャンは、刈り取った大量の薔薇の束を抱えて、元来た道を戻って行った。

‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ