novel『黒執事』vol.1短編
□『ローズガーデンの番人』
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大切に、大切に。
慈しむ様に、優しく。
気高さの中に、脆さや儚さ。
そして、弱さや寂しさを秘めた。
若干13歳で裏社会に君臨する、幼き孤王。
シエル・ファントムハイヴ。
その身にのし掛かる重圧。
癒えない痕跡と、背負う宿業。
押し潰されそうな要素に塗れながらも、果敢に立ち上がる勇姿に。
一人の悪魔は魅了されてならない。
シエルとの出逢いからの軌跡によって。
セバスチャンの内心は翻弄されてばかりで。
それはそれで癪なのだが。
愉悦で満ち満ちているのも、真実で。
”愛しい”
なんて、口にしたら。
どんな反応を見せてくれるのだろうか?
あの幼子は。
そう考えるだけで、毎日が楽しくて仕方ない。
自然と笑みが深くなるのを感じながら。
使い慣れた懐中時計の蓋を、軽く弾いた。
「そろそろ帰って準備をしなくては・・・」
仕える主人・シエルに朝を告げる為。
セバスチャンは、刈り取った大量の薔薇の束を抱えて、元来た道を戻って行った。
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