novel『黒執事』vol.1短編
□『ローズガーデンの番人』
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それから。
数分間、沈黙が流れた。
シエルにとっては、どう切り返したらいいものか。
悩ましく、気まずくて。
頭には入らない文字列と。
未だこちらに背を向けたままのセバスチャンとを。
交互に見比べていたら。
「・・・ブラン・ドゥブル・ドゥ・クベール」
「え?」
その沈黙を破ったのは、振り返ったセバスチャンだった。
「この、薔薇の名前ですよ。坊ちゃん」
気取った足音が近づき。
一輪の純白の薔薇が、スッと、シエルの前に現れた。
「お察しの通り、ローズガーデンの中でも、一番のお気に入りな薔薇です」
そして、もう一度。
間近で、その名前を復唱して見せた。