novel『黒執事』vol.1短編
□『オレンジ』
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屋敷の裏庭の片隅。
そこには、趣味の園芸程度(と言っても規模は広大)の野菜畑と。
隣接する様にハーブ園が存在する。
季節野菜が主に植えられていて。
無農薬、有機栽培がモットーだ。
更に、目を引くのは。
植物園でも開けそうな程の、個人所有では珍しい総ガラス張りな温室。
これは、セバスチャンの強い要望で建てられた、果樹専用の温室だ。
セバスチャンのスイーツ作りの腕前は、パティシエも即脱帽モノで。
スイーツに限らず。
料理全般、何者もセバスチャンの右に出る存在は居ないだろうが。
そんな料理得意の彼がこだわっているのが、食材。
吟味に吟味を重ねて、選びに選んで仕入れてはいるものの。
やはり納得出来る代物に出会えるのは少ないらしく。
とうとう、
「食材は自分で作り出す!」
なんて、言った始末。
心底、相当に料理好き。
と言う一面を垣間見た気がする。
実際、美味しいから文句は言わない。
もう一人の料理長に任せておいたら、毎食消し炭、もしくは有害物質が並ぶのは必至。
・・・それだけは勘弁してもらいたい。
だから僕は、
「セバスチャンの好きな様にしろ」
と、快諾した。