novel『黒執事』vol.2長編

□『オーダーメイド』-1
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朝焼けが、橙から白々と稜線を飾り。

天上へと伸び行くままに。
その銀線は、緩やかに形を整えながら。

円形の白盤へと姿を変える。

目に見えて傾きを刻む天空が。
淡水色から、眼も覚める様な蒼へと。

その色彩を、鮮やかにし始めた頃。

セバスチャンはいつも通り。
シャッ、と軽やかな音を立ててカーテンが開ける。

まどろみの淵にある室内に。
容赦なく照り付ける朝陽。

「起きて下さい。朝ですよ」
「・・・んー、・・・」

ベッドの中でモゾモゾ動くが。
一向に起きる気配はない。

毎朝の事ながら・・・
と、セバスチャンは溜息混じりにベッドに近づくと。
静かに、その脇に腰を下ろした

掛布を、些か乱暴にめくり上げる。

「シエル」

そこには、無防備に眠る愛し子の姿。

赤ん坊の様に丸まって。
未だ、薄ボンヤリと夢心地な様子。

「シエル」

優しく名前を呼ぶと、僅かに身を捩る。

その可愛らしい反応が、セバスチャンの胸を擽って止まない。

「シエル・・・」

寝ぼけ眼を擦る手を、そっと外して。
セバスチャンはシエルの額に口接けた。

「さぁ。もう目を覚まして下さい」
「・・・、ん」

続けて瞼に、頬に。
最後に小さな口唇に啄みを落とすと。

シエルは、ゆっくりと蒼の双瞳を開けた。

「おはようございます。シエル」

照れた桜色の頬が。
セバスチャンの瞳には、また扇情的に映る。

「シエル。おはようのキスは?」

誘導されて、渋々と上体を起こして。

先程とは反対に。
シエルからセバスチャンへと、小さく口接けた。

「おはよう・・・」

何度朝を迎えようと、この行為に慣れないシエルは。
朝一番から、ふて腐れたみたいに眉間に皺よせる。

これも日課の内。

セバスチャンは楽しそうに微笑む。
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