novel『アニポケ』vol.1短編

□『うたたね姫』
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旅の途中、休憩にはうってつけの見晴らしの良い小高い丘を見付けた。

絵に描いた様な、若草の絨毯が広がって。
強弱をつけて吹き行く風が、丈のあまり長くない草芽達を、さざめき揺らして逃げる。

雲一つない快晴の陽射しは、容赦なく燦燦と降り注ぎ。
思わず目を細める程に、キラキラ、眩しくて。

パノラマ仕立ての青と緑が際立つ。

その中心に、これまた絵に描いたみたいな立派な大木が聳え立っていて。

樹齢なんて見当もつかないぐらいに見事で。

その尊厳な立ち姿に、皆が皆、押し黙ったまま息を飲んだ。

細かく散らばる名も無い花々の、色彩豊かな様子も。
時折聞こえてくる、語り合う様な小鳥のさえずりも、虫の声も。

何もかもが煌めいていて。

生命の素晴らしさ、尊さを。
改めて実感する。

「・・・綺麗だね」

デントが、ポツリ、一言。
感嘆の溜息混じりに呟いた。

ポケモン達にとっては、その情景に酔いしれるよりも。
遊びに興じる方がいいみたいで。

「ヤナヤナ!」
「ピッカァ!」
「キバー!!」

キャッキャッと喜び勇んで、丘中を駆け回り始めた。

「俺もー!!」
「私も遊ぶー!!」

サトシとアイリスも。
荷物を放り投げるや否や。

いつの間にか手持ちポケモン全員出して、草原へとひた走る。

「やれやれ・・・」

皆、子供だねぇ・・・

デントは、二人分の荷物を拾い集めて。
ふと、考えた。

(いや、僕が老けてるんだろうか?)

なんて、苦笑いを浮かべながら。

落ち着けそうな大樹の下へと。
皆の後を追うように向かった。



(さてさて、おやつは何にしようかな・・・)

遊び疲れて。
お腹を空かせて帰ってくる皆に。

手早く、簡単で。
たくさん食べられる様に、と。

(やっぱり、パンケーキが妥当かな?)

遠く、近く。
跳ね回る声を聞きながら。

クスリ、一人で笑って。
準備に勤しむのだった。

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