novel『アニポケ』vol.1短編

□『もどかしい距離』
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ポツン・・・ポツン・・・

買い物を終えて、店の外に出た時に見上げた空は、既に泣き始めていたみたいで。

シトシト・・・

「あー、雨だぁ」

俺の声を合図に雨足が早まり。

ザー。
本格的に降り出してしまった。

「・・・あーあ」

天気予報の嘘つき!
今日は晴れ時々曇りって言ってたクセに!

降水確率だって低かったハズなのに!!

ジタジタ。
子供みたいに地団駄を踏む様に、行儀悪く両足を踏み鳴らしていたら。

背後でシュン、と軽い音がして自動ドアが開いた。

俺は出て来た人物を確認すると。

「デントー、雨!」

拗ねた口調で、唇を尖らせて訴える。

一足遅れて出て来たデントに愚痴っても、どうしようもないんだけど。

持って行き場のない"残念"とか"悔しさ"を八つ当たるには、格好の標的、な訳で。

「あー、降り出しちゃったね」
なんて、呑気に笑うもんだから。

何だか余計にイライラが募る。



今日の俺は、トレーニングは中休みで。
たまたま手持ちぶたさん(手持ち無沙汰の事)だったから。
荷物持ちとして、買い出しに出掛けるデントに付き合う事にしたのだ。

珍しく二人きりの買い物。

面白くて、楽しくて。
ついついはしゃぎすぎたのが、たまにキズだが・・・

何とか必要な物は買い揃えれた。

が、結構な量で。

ちょっと大きめな買い物用のバッグが3袋+デントのリュック1個分、といったトコロか。

あまり重くはないが、決して軽くもない。

多少は防水効果もありそうだけど。
出来れば、雨には濡らしたくないし・・・



「笑ってる場合じゃないだろ?!」

宿泊先のポケモンセンターまでは、ここからだと徒歩20分は掛かる。

自分達は構わないが。
確実に買った品物もずぶ濡れ確定だろう。

むー・・・
悩む俺を横目に、デントは口端に笑みを浮かべる。

「こういう事もあろうかと・・・」

ガサガサ。
背中のリュックの底を探るデント。

「はい」
と、取り出されたのは、一本の折り畳み傘。

「準備周到だな」
「ありがとう」

別段、褒めたつもりはないんだけど・・・
ま、いっか。

手慣れた手つきで、クルクルシュルン。

パッ。

「どうぞ」

これまた器用に、デントは俺を招き入れる。

荷物を落とさない様に、両腕にしっかりと抱えて。
「お邪魔します」
と、デントの隣に並ぶ。

通常の傘よりはやや小さめな円形の下は。
予想通り、男二人だとかなり狭いけど。

ずぶ濡れよりかはマシかな。
と、妥協して。

「じゃあ、帰ろうか」
「うん」

俺達は、ゆっくりと雨の中を歩き出した。

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