アラド同人編(おひさま)

□めいじたちのあるばいと
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夜の街。
喧騒と眩いライトが目立つ。
俺は友人に連れられ、見慣れぬ繁華街を歩いていた。
「…で、俺をどこに連れて行く気なんだ?」
四回目の質問。
「いい所いい所」
この答えも四回目だ。
友人はまるで庭を歩くかのように、迷いなく進んでいた。
しばらく歩を進めると、やがて大きなビルの前で止まった。
「このビルの三階だよ」
オフィスビルだろうか。
ついと三階の窓を見てみる。
『メイド喫茶 おふぃ〜りあ』と書いてあった。
「…おい」
「何?」
友人はけろっとした顔で俺に聞く。
「あの窓に書いてある文字を読んでみろ」
「メイド喫茶おふぃ〜りあ」
読めるじゃないか。
よかった。俺はてっきり日本語が読めない奴だと思ったよ。
「メイド喫茶って意味わかるか?」
「メイドさんがいろいろサービスしてくれる喫茶店だね」
これも正解。
今や日本の文化みたいなものだからな。
「マジでここに行く気か?金ばかり取られるぞ。別に大学にもカフェはあるじゃねーか」
「マジもマジの大マジさ。今日はサービスデーだから、お前を連れてこようかなと思ったわけさ」
「思わんでいい。行くのは構わんが俺は金を払わんぞ」
無駄金を払うのは嫌いなんだ。コーヒーだけなら三百円もあれば十分美味いのが飲める。
「固い事言うなよぉ。今日はエレンちゃんとバトメちゃんとサモにゃんの三人がいる特別な日なんだぜ?」
「え?」
「この子達マジで可愛くてさ、ファンも多いんだ。もしかしたら満席かも知れないなぁ…」
……待てよ。
そういえば今日、こんなやり取りをしたな。
「あれ?今日はお前ら全員バイトなのか?」
「うん、何かサービスデーらしくて。でも明日はみんなお休みもらえるんだ♪」
答えたのはエレだった。
「へぇ、まぁ三人だからって油断しないで、バイト終わったら真っ直ぐ帰るんだぞ?」
「了解〜♪」
「はーい!」
「わかりました」
三人ともいい返事だな。とアパートの鍵を閉めたんだっけ。
…やばい。
「…悪い。俺は急用を思い出した」
ここは真っ直ぐ帰らねば!!
こいつの語り口から三人がメイド喫茶でバイトしている可能性は高い!!
「おいおい、嘘はよくないぜ?」
「う、嘘じゃねーよ!」
「今思い出す程度の急用は急用じゃないんだよ。ほら行くぞ」
俺は友人に手を引っ張られ、無理矢理店内へと入れられた。

『メイド喫茶 おふぃ〜りあ』は俺の想像以上の大盛況だった。
何でもメールマガジンにて事前にサービスデーが伝えられており、常連客はこの日を今か今かと待ち侘びていたらしい。
余程この三人は人気なのだろう。看板娘のようなものか。
入って直ぐに、俺たちの入店に気づいたメイドさんが慇懃な挨拶をしようと駆け寄ってきた。
金髪のツインテール。外人のような青い瞳。
メイド服が予想外に似合う、小柄な少女が。
「お帰りなさいませー、ごしゅ……じん…さま…」
つまるところバトメだった。
俺と思い切り目が合ったバトメは、まるで死者が生き返る様を見るような呆けた顔をしていた。
「お……」
やめろ。
「お……」
頼むそれ以上言うなお願いします。
だが、俺の願いは当然叶うことはなかった。
「お兄ちゃん!?」
バトメの大声は、あっと言う間に店中に広がった。
それは、接客中の、同じメイド服を着たエレやサモにも伝わって。
「マスター!?」
「ご主人様…?どうして…」
何てこったい…
「お…おま…お兄ちゃん?ってことはバトメちゃんの兄貴なのか!?」
近からず遠からず。
今、従業員を含め全員が俺を凝視している。
急に、友人が姿勢を正した。
そして。
「お義兄さん」
「は?」
「今日から俺…僕の事を、義弟と呼んでください!!」
呼ぶかバカ。
思っていたときだった。
「なら俺が義弟だぁぁぁぁ!!」
突然響く怒声。
「バトメちゃんを是非俺に!」
「馬鹿野郎!!俺だ、俺に決まってる!ねぇお義兄さん!?俺にエレンちゃんを下さい!きっと幸せにして見せます!!」
「俺だってサモちゃんを想う気持ちは誰にも負けねぇぇぇぇっ!!」
と、客共が一斉に俺のほうに群がってきた。
俺をバトメ達三人の肉親と勘違いしているのだろう。
外れだが当たりだな。
「あー……ごめん、お兄ちゃん」
「いまさら遅ぇよ…」
俺は溜息を吐きつつ、バトメに案内され席に着いた。
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