頂き物&表紙絵など

□Mental Meltdown
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「じゃ、帰ろっか」


薄緑色のゴーグルを付け、少し長めの空色の髪を揺らし、にこりと笑った彼。
彼は私を知っていた。ユウの友達のちいくんの友達。ちょっと遠い関係。
行き先が同じなら一緒に行こう、と手を差し伸べられて。
ちいくんの友達なら心配ないから、その手を私はとった。

優しそうな赤色の瞳に、小さなクロスイヤリングは大人っぽくて、正直どきどきした。
リルと違う煙草のにおいや、お酒のにおい。
彼のお酒のにおいのせいか、少し変な気分になった。まだ、なんかくらくらする。

大人のにおいって、こうなのかな。


「…大丈夫か?」


ふらふらと歩いていた私に、彼は心配そうな顔をした。
においに酔ったのかな。それとも、道中で仕方なく口にしたテキーラとチーズがだめだったのかな…。
アルコールに意外と弱いんだなあ、私。


「…悪化したらマズイから、急いで戻るぞ」

「ひゃ、あ、歩けますよ…?」

「いーから。ユウに半殺しにされるし、大人しくして」


所謂、お姫さま抱っこ。
天界人って、こういう事を当たり前にやるのが不思議。
でも具合悪くないのに、こうまでするなんて、ちょっと大袈裟だと思う。私って、そんなに病弱に見えるのかな…。

ユウやリル、時々翡翠までもが私を心配して、ダンジョンに付いてくる事がある。練ちゃんは言わなくてもよく付いてくるかなあ。
そんなに心配しなくていいのに…。


「…ねむい?」


うとうとしながら考え事をしていたら、彼が微笑みながら聞いてきた。
どこか妖艶な笑みに、少し心臓が跳ねる感覚。
彼の笑顔が、最中のリルの笑みに似ていて。

…どうしよう。私、顔真っ赤だよね…?


「…寝ていいよ。着いたら起こすから」


耳元で囁かれた言葉を最後に、私は意識を手放した。



***



「ん…」

「あ、やっと起きた」

「ふぇ…ここ…」


エルブンガードだよ、と隣でにこりと微笑んだ彼。
きょろきょろと辺りを見回せば、緑がいっぱい。少し離れた場所でたむろう冒険者の人達の声と鳥の鳴き声。

ほんとに寝ちゃったんだ、私…。


「あ、あの…ありがとうございましたっ」

「ん…気を付けてな?」


欠伸をしながらふらふら歩いていく彼を見送り、私もリルの家に向かった。

空は血の様に紅かった。



***



「ただいまー」

「フォロン…っ」


真っ暗な廊下で、いきなり何かが抱き着いてきた。
ああ、このにおいと息苦しくなる抱き締め方。リルしか居ないよね。


「おかえり」

「くるしぃ…よ…」

「…ん、なにこれ」


首筋を這う、生暖かい感触。何度もそこを舐める動きに、息が詰まる。
だんだん上がってきた舌は、きっと耳に差し込まれる。
そうおもっていたけど。


「い、いたぁ…あっ!」


おもいっきり、首筋に噛み付いてきた。
引きちぎれそうなくらいの力で、皮膚に穴が開くくらいに。
離れようと必死に抵抗しても、更に強い力で噛まれて。

リルがおもいっきり噛み付くのは、私が悪いことをした時。
首筋に執拗に噛み付いたのは、そこに何かある。そういうこと…?


「この煙草のにおい…なあ、フォロン」

「ふぇ…!」

「…オレ以外の男と、どこに出掛けたの?」


壁に押し付けられ、首筋を指でなぞられる。
少し、というかすごく機嫌の悪い声。私を見る目が、獲物を狙うオオカミのように鋭い。


「…やっぱり、フォロンにはお仕置きが必要だな」

「や…っ!」

「…怯えた顔、すっごいそそる…ねえ、どこ行ったの?」

「し…シャロー……」

「…ふうん。じゃ、そこ行こうか」


有無を言わせない瞳が怖くて、思わず頷いた。
怯えきった私に満足したのか、触れるだけのキスをし、また首筋に噛み付いた。

身体より、心が痛かった。



***



「これ、付けて」


さっき噛み付いたせいか、涙目になったままのフォロンが恐る恐る手を差し出す。その手に、フォロンの一番嫌いな"おもちゃ"を置く。
途端にびくりと身体を揺らし、潤んだ瞳がオレを見つめる。


「…自分、で?」

「そ。オレにちゃんと見せながら入れて」

「……うん」


地面に座り込み、そっと下着を下ろすフォロン。今日は白色。
恥ずかしそうに脚を開いて、秘部を晒す。
周りを見渡してから渡された"おもちゃ"を秘部に宛がい、ちゅぷ、と音を立てながらゆっくり入れる。ちょっと痛そうにするフォロンが可愛い。


「…い、たあ…ぁ、あ…」


そりゃ慣らさないで入れれば痛い。天然もここまでくると、溜め息が出る。
ほんとは目の前で自慰をさせてから、入れるのを見たかったのに。
痛がって、少し感じながら指で"おもちゃ"を押し込む姿もやらしいからいいけど。


「く、ふぅ…は、入ったぁ……」

「ん、じゃあ立って」


異物が入ったからか、少し複雑そうな表情で立ち上がり、下着を穿くフォロン。
指に付いた愛液を舐めとり、オレの言葉を不安そうに待ってる。ほんと、可愛いな。
そんな表情が可愛くて、ちょっと悪戯にスイッチを入れてみる。


「ひう…っ!?」


がくん、と地面に座り込み、背中を仰け反らしながら喘ぐ彼女。いやいやをするように首を横に振り、悶えるフォロンが可愛くて。
でも、今日はお仕置きだから。
折角、フォロンの一番嫌いな"おもちゃ"を使えるチャンスだし、これを逃す気なんてない。

スイッチを切り、快楽に浸るフォロンをもう一度立たせ、スカートについた砂を払ってやる。


「じゃ、行こっか」

「ふぇ?」

「…惚けたってダメだよ」


フォロンは痛いおもいをしないとわからない。だからいつもより厳しめに接する。
オレが嫉妬深いのを知っててやってるのか。それとも無意識なのか。
どっちにしろ、質が悪い。

今日は徹底的に、教え込む。
フォロンがオレのものだって事を。



***



スイッチを弱にしたまま区切られた部屋を幾つか通る。
他に冒険者が居ないのが、フォロンにとっては幸運だった。誰かに見られながらするという事がないからだ。


「此処ならいいな」


何回かイくのを我慢しながら戦ったフォロンは、その言葉にほっと息をつく。
人に見られながらするのが嫌いな彼女にとって、野外でのセックスは苦痛に近かった。
最初こそイヤだと必死に抵抗すれば室内でしてくれたのが、いつの間にか野外の方が多くなっていた。

見られるかもしれない、と泣きじゃくるフォロンに何回も野外を強いた甲斐があったものだ。
今では見られるという恐怖心を快楽に変換できてしまうくらいになった。未だに視界を奪われるセックスにまだ慣れないのが少し残念。


「も、もう出して…い…?」

「…ダメ」


オレに縋り付き、必死に座らないようにと立っているフォロンにそう言うと、「我慢できない」と首を横に振った。彼女の甘いにおいが鼻腔を掠める。
弱にしていたけど、気が変わった。ここまで我慢できるなんて思わなかったから、弱くしておいたのに。

弱にしていたスイッチを、"強"に切り替える。
途端に彼女が身体をびくりと揺らし、大声を上げた。


「やだ…たすけ、て…っ」


異物に犯される恐怖からか、涙をいっぱい溜めて見上げてくる。
彼女の助けての言葉に弱いけれど、お仕置きをしているのだから我慢。助けたらお仕置きにならないのだから。
段々と肩を掴む力が強くなってくる。
痛いと顔を顰めても経験上、彼女は気付いた事がない。無駄と分かっていても、クセなのか顔を顰めてしまう。


「ふぇ…ん、んぅ…り、りるぅ…は、はげし…」


身体を僅かながら上下に動かし、息を詰める。
多分、必死に"オレとしている"事にしているんだとおもう。ある意味、自慰に近い行為ににやりと笑った。
オレはそこまで優しくないし、生温くない。けれど、彼女が目の前で自慰をしている。そう考えたら悪くないと思えた。
恍惚とした表情で、幸せそうに快楽を貪るフォロンに、思わず身体が反応した。

悪戯に、蜜がたっぷり染み込んだ下着に指を這わせ、そっとなぞる。
なぞる度に甘い息と声を吐き出すフォロンが可愛い。
何度も指の動きを繰り返し、絶頂へと追い詰める。


「気持ちいい?イきそう?」

「あ、ぅう、」


そろそろイきそうな、切ない声。
おもちゃでイかせる為に指で弄るのはやめて、フォロンの身体を抱きしめる。暖かいフォロンの体温。
背中にまわされた腕がキツく服を掴む。
彼女の膨らみの感触が、いやでもわかるくらい隙間のない距離。

フォロンがイく時の癖が、ふと脳裏を過る。
まあ、彼女のならいい。むしろそうさせて、更にお仕置きに持ち込める。
ぎゅう、と抱きしめて、更に密着する。


「ら、め…出ちゃう、からぁ…らめだよぉ…!」

「…いいよ、出して」

「んっん…ゃっあああああっ!?」


服を力一杯掴み、今までにないくらいにびくりと震えた彼女。
同時に、生暖かい感触がズボンを濡らした。

びちゃ、と何かが地面に叩きつけられた音も聞こえた。


「あ…や、ぅ…」

「うわ…漏らしちゃったの…?」


身体を支えながら耳元で囁くと、フォロンは嗚咽を混じらせながら小さな声で「ごめんなさい」と言った。
それがあの"印"に対してなのか、それともお漏らしに対してか。
イく時に放尿をするように仕組んだから、お漏らしにはもうなれてるはず。きっと、"印"に対してだろう。

足元とズボンは、フォロンのせいで水浸し。
フォロンの黒いスカートも、ガーターベルトも水浸しだ。
結構気に入ってた服だが、まあ買えば済む話だし。フォロンのも買ってあげればいい。

イったせいで我慢がきかなくなったのか、未だにフォロンの聖域から滴り落ちる黄色い滴が地面を濡らす。
辺りに響く水音に混じり、フォロンの啜り泣く声が聞こえた。


「…フォロンが悪いんだよ」

「ふ、ぇ…ごめん、なさ、い……」


怯えきった彼女に、そっと耳打ちする。


「…今度は、こんなのじゃ済まないからな」


びくりと身体を震わせたフォロンの背中を撫で、泣き止むまで抱きしめた。

こうでもしないと、彼女は無意識に浮気をする。今日の"印"にだって気付いてなかったのだから。
無防備なうえに人を疑う事を知らない。
誰にでも微笑みかけるし、自分に対する好意には気付かない鈍感。それにこの可愛い笑顔。
余程の堅物な男じゃない限り、フォロンを好きになるだろう。
好きになるって事は、性対象になる。つまり、無理やり犯される事だってある。

その辺を理解してないから、フォロンは危ない。

「帰ろう」と密着していた身体を離すと、小さく頷いた。


「はやく帰って、汚れ落とそっか」

「…うんっ」


さっきまで泣いてたくせに、もう笑顔になってる。そういうところも可愛いから好きだけど。


もうこんなことをしなくて済むように、存在さえ危うい神に祈った。



(Mental Meltdown)

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