アラド同人編(おつきさま)

□催眠陵辱館〜シーフ編〜
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美しい、ただひたすらに美しい肢体。
誰もが見とれるほどに均等が取れた身体に、整った顔立ち。
異国の出身たる証の褐色の肌は、彼女の持つ本来の美しさを余すところ無く引き立たせ、尚且つ自身もその存在を誇示している。
夜の世界を暗躍する彼女は、青い薔薇の飾りが冷徹な印象を与える漆黒のハットに血を連想させる赤いマフラー、そして黒を基調とした華麗な、それでいて無駄の無い衣服を着用している。
ヒールの高い靴を履いているが、卓越したバランス感覚により転ぶことは勿論音を立てず獲物に忍び寄ることすら、彼女にとっては造作も無いことなのだ。
その肌の色とは対照的な眩いばかりのショートカットの銀髪が、彼女の動作に合わせて燦爛とたなびく。
闇に映える銀色の髪やその動きの美しさを称え、『銀の月/シルバームーン』と呼ぶ者もいれば、彼女に命を狙われれば逃げることは不可能、それ故畏怖の念を込め『死を運ぶ者/デスブリンガー』と呼ぶ者もいる。
そのような様々な異名を持ち、命や情報を盗むことを生業とするダークエルフの女性、シーフはとある富豪の依頼を承諾し、酒場を後にしたところであった。
内容は、ウェストコーストにて攫われた富豪の娘を救出する、といったものであった。
「無事救出して三百万ゴールド…このご時世に羽振りがいいじゃないか」
得物を手に取りクルクルと空中で弄び、夜の街を歩いていた。
「どれ…ひとつ仕事と洒落込もうか」
行方不明になったといわれる路地に入り、懐から使い慣らした短剣を二本取り出す。それぞれの手に逆手持ちにして、構えながらゆっくりと前進するシーフ。
攫われた娘は、富豪の男の養女として可愛がられていたメイジらしい。
適当に探索を続けていたシーフが、ピタリと動きを止めた。
「……誰だい?あたしの周りでコソコソしてるのは」
気配がしたのだ。その数、三人。
「早いとこ出てきな。そうでなきゃこっちから行くよ」
スッ…と高いレンガ造りのビルの陰から、黒いラバースーツを着た三つの影が現れた。
ぴったりと密着したそれは、女のフォルムを映し出していた。
三人は性別こそ一致しているものの、体つきは大きく異なっていた。
一人は小柄で華奢、桃色の髪をツインテールにし、手に長い棒を持っている。もう一人は両の手に手甲を嵌めた一般的な体格の女。髪も適当にポニーテールにしたみたいだ。そして最後の一人は所謂モデル体系の、背の高いブロンドの女。彼女だけは何も所持していなかった。
彼女たちは全員、その顔を隠すかのようにガスマスクを嵌めていた。
「アンタら…同業者?それとも………誘拐犯さんか?」
「………」
女たちは答えず、フシュー、と機械的な呼吸をひとつした。
「可愛げの無い奴らだね。ただでさえ短気なあたしを怒らせるとは…いい度胸してるじゃないか」
カツッ。三人はシーフを囲うような位置に立った。
「フン…。まぁいいさ。丁度身体を動かそうと思ったんだ。まとめてかかってきな!!」
その挑発にまず最初に乗ったのは、一番小柄な桃髪の少女。
棒を振り回し、猛然とシーフに向かい攻撃を仕掛けた。
シーフは真上に跳び、それを避ける。
「最初に死にたいのはアンタだね?」
ニヤリと笑い、背を向けた少女にナイフを振り下ろそうとする彼女に、仲間である背の高い女が連続して蹴りを放った。
避け切れず、最後の一撃を腕で防御する。
「ぐ…っく…!」
痺れるような痛みに、顔を歪ませる。
女性の力とは思えない程の重い蹴り。直撃したら危なかった。
懐からクナイを投げ、牽制する。
今まで相手にしてきた雑魚とは…格が違いすぎる。
表情から余裕が消え、冷や汗が流れる。
トントンと、不意に肩を叩かれた。
「ひっ!」
慌てて振り向くと、手甲を嵌めた少女が、目と鼻の距離にいた。
すぐさま後ろに逃げようとしたが。
「ごほ………っ!!」
内臓に響くほどの強烈な拳が、シーフの鳩尾にめり込んだ。
少女の…腕力ではない…!
「がふっ!……ぐ………げほっ、おえっ…!!」
堪らず蹲り咳き込むシーフ。
早く逃げろ。脳はそう急かしたてるが、身体は痛みに悶え、言うことを聞かない。
それでもふらつきながら、何とか立ち上がる彼女に追い討ちをかけるかの如く、喉笛に長い棒が牙を剥いた。
「ごぶぇっ!…げぇ……っ!!」
がくりと崩れ落ちる身体。
そして容赦なく傷ついた腹に襲い掛かる、長身の女の蹴り。
「ぐぶっ……ご、ぼっ…!!」
一撃毎に刻み込まれる、恐怖と痛み。
悪魔のような三人の女と、これ以上戦うことは……シーフには出来なかった。
「……あが…ぁ…」
徹底的な暴力に遂に心も折れたのか、シーフは首を垂らし、気を失った……。
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