アラド同人編(おひさま)

□めいじたちのあるばいと
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「ご注文をどうぞっ、ご主人様っ♪」
冷水を二つ、俺と友人のところに置いたエレが、ニコリと微笑み注文を聞いた。
「俺は…コーヒーとオムライスで!」
友人は嬉しそうに計二千円弱の注文をした。
「俺はコーヒーだけでいいよ」
これだけでも五百円。痛い出費だ。
「コーヒーがお二つとオムライスをおひとつ、以上でよろしいですね?少々お待ちをっ」
元気いっぱいにエレは厨房へと走った。
何だか楽しそうだな。
ヤバイ店じゃなければ俺は文句を言うつもりはない。
楽しんでバイトをして欲しいと思う。
友人がエレやバトメやサモの魅力を熱っぽく語ること15分、コーヒーとオムライスが到着した。
「お待たせしましたっ、コーヒーお二つとオムライスです!」
意外と美味しそうだな。
玉子の半熟具合、もしかしたらエレが作ったのかも…。
後で聞いてみよう。
「ハートマークでお願いします!」
友人がやはり嬉しそうに言うと、エレがかしこまりました、と徐にケチャップを取り出し、オムライスにハートマークを作った。
「あ、ありがとうございます!」
何が嬉しいのかねぇ…。
理解に困るが、これも商売だ。口出しはやめておこう。
思い、俺がコーヒーを一口啜ったときだった。

ガシャン、パリン!

「きゃぁ!」
小さな悲鳴の主は、サモだった。
「熱っ!!何してくれるんだよ!!」
怒鳴るのは、太った男性客。
アニメのキャラクターらしきTシャツを窮屈そうに着た、暑苦しい男だった。
「す、すみません…!」
「すみませんじゃねぇよ、どうしてくれんだよ俺のジーンズ!」
男はコーヒーをかけられたことをかなり怒っているようだ。
「…アイツはネットでも度々出てる迷惑野郎だ。ああやって騒いで、何軒かの店はアイツを出入り禁止にしてる。…あれ、わざとサモにゃんに足引っ掛けたんだぜ」
友人が小声で俺とエレに言った。
マジかよ…。
「まぁでも、やっちまったもんはしょうがねぇよな」
男は汚い笑顔をサモに見せた。
「ここ火傷しちゃったみたいだからよ、口で治療してくれよ…へへ…」
「そ、そんな……」
最低な奴だ。
周囲の客もも見てみぬ振り。
男性店員は何をしているんだろう。
見かねた俺がサモを助けようと立ち上がると、エレが俺を座らせた。
「マスター、ここは私に任せて。…ここは私達の店。ああいうお客様には、ちょっと痛い目を見てもらわないとね」
美しい笑顔で俺達を一見し、男の方へと向かった。
天使のような笑みを見た友人は、うっとりとした顔をしていた。
今度特別料金を請求してやるか。
「失礼します、どうなさいましたか?」
エレが男の下へと歩み寄る。
一方の俺はいつでも立てるように席を移動した。
「ああ、エレンか。サモが俺のズボンにコーヒー引っ掛けやがってよ」
こいつらを気安く呼び捨てにするな。
俺は怒りを感じたが、エレの言葉を信じ、自分を押し留める。
「ち、違います…!お客様が、足を引っ掛けて……」
「あぁ?客のせいにすんのかこの店は!」
男が凄むと、サモはごめんなさい、と涙を零した。
「ほら、早く口で綺麗にしろよ、サモ」
「ごめんなさい……私には…でき、ません……」
ぽろぽろと泣きながら必死に謝る。
「あの、ご主人様。サモちゃんの代わりと言っては何ですが、私がしますから、サモちゃんを許してあげてください」
エレが言うと、男はニヤリと頬を緩ませた。
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