アラド同人編(おつきさま)

□ウエストコーストの亡霊
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そっと薄目を開く。ぼやけていた視界が徐々に鮮明なものとなってゆく。
先ほどとは打って変わって明るい、だが無機質な白い壁の部屋。目の前にこれまた無機質なドアが見える。
「私……」
自分は椅子に座っている。しかし、何だかくつろぐ為に作られて物ではないらしく、固い素材でできている。
不意に横を見ると寝るのにはあまり適さない感じのベッドが置いてあった。ここは病院の一室だろうか。
痛みや衣服の乱れが無いという事は、今のところあの幽霊には何もされていないようだ。
安堵したものの、少女はすぐに絶望に叩き落された。
「嘘…っ!そ、そんなぁ…」
両の手首が、足首が椅子の手すりや足に付属しているベルトに拘束されている。
ガチャガチャと動かすも、自分の力では外れそうにない。
「ど…どうしよう…」
おろおろしていると突然ガチャリ、と目の前のドアが開く。
メスやら鉗子やらの入ったワゴンを押す一つの影。
「やぁやぁようこそ僕の研究室へ!」
長身の男がやけに嬉しそうに声をかけた。年は若いのだろうが少し疲れた顔をしている。痩せぎすで倒れやしないかと少し心配になるほどだ。
目の下には隈が見え、伸び放題に伸びた無精髭を剃ろうともしていない。そしてその痩せた体を皺だらけの白衣で隠している。
「やっぱり特殊迷彩服は便利だよ。こうやってモルモットが手に入るんだからねぇ…ククク」
奥のクローゼットから取り出したのは妙な色彩の全身を覆うスーツ。
幽霊の正体はこの青年というわけか。
「モル、モット…?」
メイジは自分が恐らくよからぬことをされるのだろうとわかり、怯え始めた。
「全く、世間はまるで僕の研究を見ようとしないね。…バカ共でもわかる様に論文を書いて、ガチガチで低脳な帝国の評議員に下げる必要のない頭を下げて、なのにその論文をちらりと見て門前払いさ……全く理解しがたいね」
怯える少女を無視し、あまり広くない研究室を手を後ろに組んで歩き回り、青年は溜息を吐いた。
「ところで…君さ、メイジだろ?何で僕の素晴しい研究は無視されて、君達のやるような『手品』は認められるのかなぁ?」
「手品…?」
違う。
必死に、血の滲む様な努力を重ね、魔力を具現化する能力を身に付けて、なのに手品と吐き捨てられた少女の心は深く傷ついた。
「手品なんかじゃ…ないです…」
小声で反論すると、青年は露骨に眉を顰めた。
「凡人の…いや、俗物の君がこの僕に何を言ってるの?本当の事だろ?ランタンファイアだって、ただの火達磨のカボチャじゃないか。あんな猫やらなんやらのぬいぐるみを生き物のように見せてさ、ハハッ、手品以外の何者でもないよ」
細身の男に罵倒される中、少女は自分を冒険に駆り立てたきっかけを作った、一つの決意を思い出す。
荒廃した魔界で行き倒れた自分を介抱してくれた、とある女性が口癖のように語った、後に自分も口癖のように独白することになった言葉。
『私の魔法で皆を幸せにするんだ』
「私の…魔法で…皆を、幸せに…」
悔しくて、切なくて、目元に涙を溜めながら弱々しくその決意を口にする少女に青年は嫌な笑いを浮かべた。
「はぁ?そんな偽者の奇跡なんて誰も求めていないのさ。そう…世界が求めている奇跡は科学!僕の崇高なる研究なのさ!」
自意識が過剰なのだろう。メカニックは自分の言葉で興奮し始めてきた。
「…それと、あまり僕に口答えしないほうがいいよ」
青年は懐から小さなリモコンを取り出し、つまみを捻る。
「ひぐっ!」
ギリ…と少女を拘束していたレザーベルトがその細い手首に食い込む。
骨が軋み、細胞が弾ける。
「うぁ…あぁ…」
が、すぐにベルトは弛緩し、少女は痛みから解放された。
痛々しい赤い痣が手首に痕を付けた。
「これ、つまみを全開にしたら僕もどうなるかわからないんだよね。骨が折れるか…最悪君の体と、その手が永遠にさよならするかもしれないねぇ…クク」
「ひっ…」
一瞬その残酷な情景を想像したのか、メイジは青ざめる。
「…なんか君見てるとムカついてきた。あいつらみたいに能天気な顔して、僕の研究を知ろうともしない…」
彼はメイジの元に歩み寄り、着ている黒のレースドレスを掴み、思い切り腕を横に引いた。
「きゃぁっ!」
ぶちぶちとボタンが飛び、落ちたそれはカランカランと床を跳ね回る。
服は引き裂け、胸や股間を覆う可愛らしい下着が青年の目の前に露になった。
「ふぅん、魔界人とはいえ、体系や骨格は人間とほとんど変わらないのか」
ワゴンから鋏を取り出し。
「クフフ、どんな感じかなぁ…?」
煌くそれをジャキジャキと空で鳴らした。
「や、やめてぇ…!」
ぶんぶん首を振るが、青年は無視し、鋏を使い少女の聖域を守る二枚の下着を切り始める。
まずは上から。
白くきめ細かな肌。成長期らしく、ほんの僅かな発展途上の膨らみ。その先端に見えるのは二つの薄桃色の突起。
その極上とも言える光景に青年は特に感心することなく、極めて機械的に鋏を下に動かし、シャキッ、と一度指を動かした。
はらりと純白の布が床に落ち、そこに見えたのは幼い少女の女性の部分。
「ほぉ…毛すら生えていないのか」
「見ないで、見ないでよぉ…」
誰にも見られたことのない自分の秘密を、名前も知らないような男に見られている。屈辱的だ。
メイジの、唇を噛み締め羞恥に耐える姿を見て、メカニックはニタリと笑う。
「モルモット風情が恥ずかしい…か。滑稽だね」
青年ははたと思い立ったようにワゴンから不可思議な機械を取り出した。
銀色に鈍く光る手のひらサイズのカプセル型のそれ。下部にはなにやら足のような物が生え、そして上半分、特に先端には鋭利な刃が四枚、放射状に付いている。
「な、何…?」
スイッチが入ると、耳に痛い金属音を放ちながら刃を持つ部分が高速で回転する。
「こいつは僕が開発した…もともとは投擲兵用に作った改造型ランドランナーさ。敵の下半身を負傷させる目的でね。もちろん自立歩行ユニットも搭載してるから、あらかじめ登録しておいた標的を下に付いた足で追い掛け回して…目標の皮膚をこの刃で突き破って…あとは分かるよね?」
今じゃお蔵入りだけど、と苦笑しながらそれを彼女の…股間に向けた。
「こいつを君の膣内(なか)にいれてさ、奥まで突っ込んだら…果たしてどうなるだろうねぇ」
「い、嫌!お願いしますやめて下さいっ!!」
「やだね。…僕に口答えした罰だよ。子宮も、何もかも全部ズタズタにしてさ…クク、二度と誰にも愛されない体にしてあげるからね」
「やだあぁぁぁ!!」
蒼白になりながら叫ぶ少女を無視し、男はゆっくりと腕を少女の小さな性器に近づける。
回転する刃が彼女の白い肌に当たるその瞬間。
「なぁんてね」
フゥゥゥン…と刃の回転が止まる。
「はぁ、はぁ…はぁ……はぁ…」
「僕はこう見えてもモルモットは大事にする方なんだ。ま、あまりにひどい態度をとるようだとそれなりの処置をとるけどね……おや?」
メカニックは少女の下腹部からほのかに湯気を出しながら溢れる小水を凝視する。
「うっ…えっ、く……ふぇ…ぇ…」
メイジは固定された体を小刻みに震わせてぽろぽろ泣いていた。
「恐怖のあまりの失禁か……」
青年が吐き捨てる様に呟いた。
それから彼は仕様が無い、といった風にハンカチで彼女の股間を拭ってやる。
「これでわかったろ?僕の機嫌を損ねることが如何に愚かなことだってさ」
つい、とすすり泣く少女に顔を近づけ。
「そういえばさぁ…メイジ、つまり魔界人って、確か知能が高い種族なんだよねぇ…」
じぃ…と穴が開くほどに見つめられ、少女は耐え切れず顔を背けた。
「魔界人と、僕たち天界人との間に出来る子供が…どれくらいの知能を持ち合わせて生まれるのか……興味深いとは思わないかい?」
「え……?」
まさか。
その言葉の意味を知った少女は真っ青になりながらカチカチと歯を鳴らした。
「何を怯えているんだ?喜べよ。君程度のメイジが未来の偉大なるマイスターの子種を得る権利を頂いたんだぞ?むしろ感謝してもらいたいくらいだね」
メカニックはやや不機嫌になりながら少女の手足を拘束していたベルトを外す。
そして逃げ出さないように手枷で彼女の両手を繋いだ。
「やだぁ……だ、誰か…助けて…!」
「無駄だよ。この部屋には僕と君しかいないからね…思う存分に泣き叫べばいいさ」
騒ぐ少女とは対照的に男は静かに耳打ちする。
「さぁ…実験開始だ」
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