TOV・CP

□茜色に映る
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茜色の空の下、どこか悲しげな空気を纏う彼女を見つけた。

暫く、声をかけるべきかどうか悩む。

迂闊に声をかけられるような雰囲気ではなかったから。

けれど、『ほっとけない病』の自分が、ソレを無視できるはずもなく……。


「珍しいな。何かあったか?」


一人でぼんやりとしているジュディスに声をかける。

彼女は、何も返さずに立ち上がった。


「貴方、タイミングが悪いわ」

「タイミング?」


呼吸と共に吐き出された言葉。

ジュディスはユーリに背を向けたまま、動かない。

そっと手を伸ばすが、触れられなかった。


「ユーリ」

「ん?」

「何も聞かずに、そのまま帰ってくれないかしら」

「はっはっはっ。それは、無理な注文だな」


ジュディスのため息が聞こえる。


「貴方ね……」

「ジュディがこっち向いてくれたら、考えるさ」

「……」


沈黙を作り、彼女は頭を左右に振った。

数歩前に進んだジュディスは、小さく笑った。


「無理よ。今の私、貴方に見せられるような顔じゃないわ」

「そんな風に言われると、余計見たくなるな」
 
「酷いわね。女の子には、もう少し優しくするべきよ」

「気が向いたら、努力する」


ジュディスは肩を竦め、そのまま黙ってしまった。


「言いたくない事なら、聞かねぇけどさ」


ユーリは一歩ジュディスに近づいた。


「何か、今のジュディは放っておけない気がするんだよな」


また一歩。


「ユーリ」

「ん?」

「反対……向いてくれないかしら」

「……分かった」


お互い背中を向けている。

その間を冷たい風が通り過ぎて行った。


「ジュディ?」


何も言わないし、動かない気配。

不思議に思って、声をかけた。


「動かないで」

「はいはい」


直後にジュディスが近寄ってくるのが分かった。

すぐそこで足を止めた。


「ユーリ」

「ん?」

「ありがとう」


彼女の手が、そっと背中に触れた。

熱い手だった。


「ジュディ?」

「ありがと。貴方のおかげで、落ち着いたわ」
 
「そっか。役に立てたなら、光栄だ」

「ふふっ。ホント、貴方って変わった人ね」


褒められているのか、貶されているのか。

どちらとも取れない曖昧な言い方だったので、適当に頷いておいた。


「先に帰って。私はもう少ししたら、戻るわ」

「……分かった」


彼女を見る事なく、歩き出す。

暫く歩いて、ふと振り返る。

そこにいたジュディスの背中は、いつもの彼女で。

ユーリはほっとして、足を進めた。






茜色に映る

その姿を綺麗だと思った。








E N D



2009/06/07
 

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