TOV・CP

□槍の雨が降っても
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「最悪……」


店にいたのは、二十分程度。

その間に、青空は鉛色へと姿を変え、雨を降らせていた。

道端に落ちた雫が足下へ跳ね、リタは一歩下がった。

無意識に、紙袋を抱き締める。


「止みそうにないじゃない」


気のせいか、先ほどより強くなっている。

このまま、ここにいてどしゃ降りになると、すごく困る。

今すぐ走り出すべきか。

しかし、そうすると荷物を濡らしてしまう。

いい案が見つからない。


「よう、リタっち」

「……」


青い傘を手に近づいて来たのは、レイヴン。

いつものようにだらしない格好で、意味の分からない笑みを浮かべて。


「何々? あまりにもカッコ良すぎて、固まっちゃった?」

「火焔の帝王、地の底より……」

「冗談です。イラプションは、止めて下さい」


レイヴンはリタの隣に立つ。


「何の用事?」

「そんな言い方ないんじゃない? せっかく、迎えに来てあげたのに」

「……はぁ?」


何を言ったのか理解できない、それが間抜けに言葉に出た。

誤魔化すように、咳払いをする。

改めて尋ねた。


「何て言ったの?」
 
「だーかーらー、リタっちを迎えに来たの」

「あ、荷物ね。はい」


エステルに急いでと頼まれていたのを思い出した。

待ちきれなくなったのだろう。


「……何」

「何って何よ。荷物を取りに来たんでしょ」

「おっさん言わなかった? リタっちを迎えに来たんだけど」

「?」


レイヴンに手を引っ張られ、雨の中へ。

リタの頭上には、青い傘。


「ちょ……」

「暴れると濡れるよ〜」

「離しなさいよ!」


ギュッと更に握られ、暴れるのを止めた。


「エステル嬢ちゃんは、リタっちの帰りを待ってるのよ?」

「……」

「遅れたついでに、デートし、ぐふっ」

「あたし、よく聞こえなかったから、もう一度言ってくれない?」


にこり。

悪意の詰まった笑みを向ければ、大げさに肩を落とす。

ため息もつけて。


「へいへい。何も言ってません」


歩幅を合わせて、雨音に並んで。

目的地には、随分早く到着した。

もう少し歩いていたかったなど、口が裂けても言えない。


「ねえ」

「何?」
 
「助かったから、一応言っとく。ありがと」


笑われるかと思ったけれど、レイヴンの手が優しくリタに触れた。


「助けが必要なら、いつでも言ってちょうだい。すぐに来るから」

「来なくていい」

「ツレナイねぇ……」


青い傘を畳むレイヴンに背を向けて、エステルの所へ急いだ。

素直になれない唇を噛みながら。






っても

(リタっちの事、守ってあげるからね!)

(バカっぽい……)









E N D



2009/04/04



***

うちでは、あんまり需要ないけど、初チャレンジ。
キャラ違うような気が。

 

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