TOV・CP

□ドレスを脱いで
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「何かあるのか?」


いつもと違うジュディスの格好に、素直にそう尋ねる。

青いドレスを身に纏った彼女に。


「似合うかしら?」

「ああ。綺麗だな」

「ありがと」


ジュディスはユーリの問いには答えなかった。

ただ、見せびらかすように、くるりと回った。

ふわりと裾のギャザーが、空気を吸って舞う。


「どっか行くのか?」

「バウルと散歩よ」


先ほどから、ユーリの問いかけに答えてくれていない気がする。

それを分かっているのだろう。

ジュディスは意味ありげに微笑んだ。


「何時くらいに帰って来るんだ?」

「貴方が寂しくなる前には」

「それは助かるな」

「嘘じゃないわ」

「嘘だと思ってないけどな」

「そうかしら」


ジュディスは口元に手を置き、考える素振りを見せた。

その後で、やわらかく微笑む。


「じゃ、行ってくるわね」

「気をつけてな。嫌なら、すぐに帰って来いよ」
 
「バウルと散歩よ? 危なくないし、嫌じゃないわ」

「そうだったな」


それ以上言葉を交わさず、ジュディスはバウルと出掛けて行った。

そんな二人を見送って、ユーリもその場を離れた。








***


「……」

「遅かったな」


静かに扉を開けて入ってきたジュディスに鍵を投げる。

今日、彼女が泊まる部屋の鍵だ。


「ただいま。まだ起きていたの?」


日付が変わって、もうすぐ一時間半。

宿はすっかり夜中の顔になっている。

ここにいるのは、ユーリとジュディスだけ。


「オレが寂しくなる前に帰って来てくれるって言っただろ」

「……そうだったわね。もしかして、寂しかったのかしら」

「ああ。寂しくて寂しくて眠れなかったぜ」


肩を竦めて、わざとらしい演技をするユーリに、ジュディスは小さく笑った。


「そう。ごめんなさい」

「一杯、付き合わないか?」

「未成年を誘うの?」

「酒だって言ってないぜ」
 
「分かったわ。着替えてから、貴方の部屋に行くわ」


ユーリは手を振り、部屋に帰って行った。

小さく息を吐き出す。

身体に溜まった疲れやイライラを外へ出すように。

そんな自分を見抜いたのだろう、彼は。


「まったく、放っておけばいいのに」


口ではそう言いながらも、本当は嬉しい。

いつもより動きにくい服を引きずり、ジュディスは自分に与えられた部屋へと進んだ。

数分後、ユーリの部屋へ向かう彼女の足取りは、軽やかだった。






ドレスを脱いで

いつもの君が好き。








E N D



2009/05/01
 

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