TOV・CP

□猫にキス
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「なあ、リタ」

「んー……」


分厚い本から目を離さずに、生返事。

聞こえているのか怪しいものだ。

聞こえていないと困るのだが、ユーリは少し間をあけて話を続ける。


「何でそんな格好をしてるんだ?」

「!!」


今まで反応らしい反応を返して来なかったリタが、手に持っていた本をバサリと落とした。

ページには折れ目がつき、読んでいたページが分からなくなった状態だが、それどころではないらしい。


「な、何の事?」


裏返った声と、ポーカーフェイスを保とうとする不自然な表情。


「何の事って、そのね――」

「きゃあー」


リタが落とした本を投げた。

何とかそれを受け止めたが、危ない。

次はカップでも飛んできそうだ。


「リタ危ない」

「だだだだったら、変な事言わないでよ!」

「いや、変な事じゃないだろ」


顔を赤くして睨んでくる。

そんな可愛い顔をされたら、苛めたくなる。

ユーリはそっとリタの頭に手を乗せた。


「ちょっと、触らないで!!」

「可愛いな」
 
「!!」


大きくなった瞳。

赤かった頬に更に赤が増す。


「ホント可愛い、耳」

「耳!?」


頭についた猫耳が本物だったら、間違いなく忙しそうに動いていただろう。

先ほどから表情がコロコロ変わる。

それは、初めて会った時には、考えられなかった事。


「ど、どーせ、あんたは、コレが好きなんでしょ。だったら、自分につけなさいよ」


猫耳に伸ばすリタの手を掴む。


「な、何?」


怪訝そうに見てくるリタに、不敵な笑みを浮かべ、彼女の手にそっと唇を落とした。


「〜〜!!」


言葉にならない悲鳴のような物が聞こえたが、それを無視する。


「やっぱ、可愛いな。リタは」


名前を強調すれば、真っ赤なカオと泣き出しそうな瞳に睨まれた。


「あんたなんか、大っ嫌い」

「はいはい」


魔術が飛んでこなくなったのも進歩だろうか。
 
体温の上がる小さな手を握りながら、ユーリはそんな事を考えた。






猫にキス

(ユーリに構ってもらいたいんでしょ?)

ジュディスの言葉が、グルグルとリタの頭の中を回っていた。









E N D



2009/05/07
 

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