TOS-R・CP

□見えない星
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「アリスちゃん!」

「……」


言葉を交わす事すら、鬱陶しい。

アリスは、ジロリと見ただけ。

そんな彼女の態度を気にする事なく、デクスは笑顔で近付いた。


「アリスちゃん、あのね!」

「何がそんなに楽しいワケー? こっちは、マルタちゃん見つからないから、イライラしてるのに」

「ほら、見て!」


アリスの話を聞く気がないのか。

それ以上に伝えたい事があるのか。

デクスは、嬉しそうに左手を開いた。


「……何それ」

「桜貝。アリスちゃんに似合うと思って!」


七色に輝いて見える小さな貝を、アリスの手に乗せた。


「意味わかんない」


躊躇する事なく、それを投げた。

ほんの少し寂しそうな顔をしたが、それは一瞬。

すぐに、見慣れた(ふざけた)笑顔に変わった。


「でね、アリスちゃん」

「何度も言わせないで。ほっといて」

「嫌だ」

「……」


会話にならない。

アリスは盛大なため息を一つついて、瞳を閉じた。

無視を決めたが、デクスは気にする事なく、話し続ける。
 
よくそんなに話題がある物だ、と感心するほどに。


「それで、アリスちゃんが」


半時間は過ぎただろう。

言葉を止める気配のないデクスを無視するのも、いい加減疲れた。

アリスは何も言わずに、歩き始めた。


「ア、アリスちゃん!?」

「3Kはついて来ないで」

「アリスちゃん、どうしたの!?」


慌てて追いかけてくるデクス。

まるで、大きな犬のようだ。

アリスは疲れたとため息をついたが、その口元には微かな笑みが浮かんでいた。






見えない星

でも、いつまでもそこで輝いていて。








E N D



2009/06/09
 

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