TOS-R・CP

□孤独の空に、うざったいほど星を散らして
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夜の風は冷たい。


頬を撫で、熱を奪っていく風。


子どもの頃、切に願っていた。


この血も共に拐って行ってほしいと。


朝になれば、無駄な願いだと思い知らされた。







「アリスちゃんっ!」


背後から突き飛ばすのかと思える衝撃で抱きつかれた。


「……デクス」


イライラと沸き上がるマイナス感情で名前を呼ぶ。

いつものことだが、まったく効果はない。


「何だい、アリスちゃん!」

「重いし、鬱陶しい。さっさと離れなさい!」


渋々といった様子で、デクスはアリスから離れた。

離れたといっても触れるか触れないかの距離。


「このままキスしてもいいかい?」


初めてだとも思えるほどの距離。

近すぎる位置で視線を交わす。

頭痛の種を植えつけられた気がした。

デクスは今何と言った。

頭が処理する事を拒絶する。

仕方ない。

アリスは思い切りデクスの腹を蹴り飛ばした。
 
愛用の鞭を手にしていなかったから、このような方法をとった。

油断していたせいか、デクスは思いの外離れた。

大きな音と共に。


「アリスちゃん、酷いよ!!」


頭に本を乗せた状態。

それが似合っているように見えるから、この男は不思議だ。


「あんたなんかが、アリスちゃんに触れていいと思ってるの!?」

「じゃあ、誰ならいいんだよ」

「あんたに答える義務はないわよ」

「教えてよ〜」


律儀に落とした物を片付けるデクスは、すべてを終わらせた後でアリスの様子を窺ってきた。



(ホント、バカなんだから)



ため息をこぼし、アリスは窓に近づいた。

青と白が混ざった、綺麗な空だった。

『混ざる』という言葉は、あまり好きではない。


「アリスちゃん」


風を包むカーテンのようにふわりと。

また抱き締めてきた男に、アリスはどうすべきか考える。


「あんた、クサイ」

「そんなことないよ!」
 
「アリスちゃんのことが好きとか言うなら、アリスちゃんの匂いに合わせれば?」


反応がなかった。

そっと顔を上げれば、茹で蛸のように赤くなったデクスがいた。

それは何のつもりか問いただそうとすれば、体に回された腕に力が入る。

少し痛いと思うほど、強く。


「デク……」


言葉は、そこで消えた。

強制的に消された。

今日は頭がサボりたがる。

何も考える気にならない。

……とも言っていられない。


「ちょっと、デクス! バカ! 離れなさい、3K!」


突き飛ばして、本気で殴る。


「痛いって!」

「あんたが変なことをするからでしょ!」


武器を使わなかったのは、良心か余裕がなかったからか。
 
アリスは暫くデクスを殴り続けていた。






孤独の空に、うざったいほど星を散らして


そうすれば、寂しくない。








E N D



2009/11/05
 

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