TOG・CP

□守る想い
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自分より随分小さな彼女は、先ほどからずっと抱きついていた。

そこにある薄い紫色の髪。

アスベルはそっと頭を撫でる。

身動き一つせず、ソフィはそれを受け入れた。


「ソフィ?」

「……」


声をかけても、返事はない。

何度か繰り返しても、同じ結果。

どうしたものかと頭をかく。


「俺にくっついても、面白くないだろ?」


ソフィはアスベルの背中部分の服をギュッと握った。

絶対に離さない、そう言うように。


「ソフィ……」


困ったように呼んでも、返事はない。

実際、ものすごく困っているのだが。


「アスベル」


暫く沈黙が続いて、ソフィは弱々しく名前を呼んだ。


「何だ?」

「アスベルアスベルアスベルアスベル」

「一体、どうしたんだ?」


ソフィは腕の力を強くした。

痛いほどではないが、かなり強い力。

眠れない夜に怯えている子どものような、そんな錯覚を覚えた。


「アスベル、お願い……」


消えてしまいそうな声。
 
顔を押し付けている分、声は服に吸収されている。


「どうしたんだ、ソフィ?」


出来るだけ優しく、決して声で傷つけないように。


「アスベル」


何度も何度も、彼女はアスベルの名を呼んだ。

何かを伝えるように、何かを繋ぎ止めるように。

その他にも、一言二言口にしたが、アスベルはそれを聞き取れなかった。

満足したのか、理由は定かではない。

ソフィはアスベルから離れた。

そして、いつもと変わらない顔を見せる。

ほっとした自分がいた。


「アスベル」

「何だ?」

「お腹すいた」

「そうだな。俺も何か食べたい。行こうか」

「うん」


差し出した手を、ソフィは軽く拒絶した。

それは、嫌だからではなさそうだ。

だから、気にしないで先に歩く。
 
ついてくる気配に、頬が緩んだ。

一方、ソフィは何かを決意した瞳で、アスベルの背中を見つめていた。

ギュッと握りしめた拳を、その証にして。






守る想い

その強さに、わたしは負けたくない。








E N D



2009/09/02
 

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