TOG・CP

□どれだけ近づけば
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頬杖をつき、先ほどからシェリアはずっと、アスベルを見ていた。

飽きる様子もなく、ずっと。

減るものじゃないし、とそのままにしていたアスベルだったが、段々気になってきた。

というのも、彼女の視線に重みが増してきたからだった。


「……シェリア?」

「何?」


ニコリと、不機嫌を貼りつけた微笑み。

いや、アスベルがそう感じただけで、実際は純粋な笑みかもしれない。

一先ず、アスベルはペンを置いた。


「何か言いたい事があったりする、のか?」

「よくわかったわね」


やっぱり、そんな視線だったか。

思わずこぼれそうになったため息を、気づかれないように飲み込んだ。


「一体、何を」

「アスベルの横顔が好きだな、なんて」


彼の正面にいるシェリアは、また一つ笑った。

自分はいつ地雷を踏んだのだろうか、とアスベルは悩み始めた。


「シェリア、傷つけたのなら先に謝る。すまない」

「……私、アスベルの事好きだけど。そういう所、嫌い」


好きと嫌いという正反対の言葉を貰ったアスベルは、複雑そうに眉を顰めた。
 
シェリアは表情を崩さずに、アスベルの言葉を待っている。

彼女が出すオーラに、アスベルはわずかに身を引いた。

完全に押されている。

どうするべきかと視線を動かせば、時計が目についた。

まるで吸い寄せられるように、じっと針を見る。

アスベルはバンッと大きな音をたてて、テーブルを叩いた。

それと同時に立ち上がったから、椅子も派手に倒れた。


「アスベル……?」


さすがに驚いたシェリアは、恐る恐る彼の名前を呼んだ。


「シェリア、ごめん」


頭を下げて、何度も謝罪の言葉を並べる。


「こんなに時間が経ってるなんて思わなくて……!」


アスベルが終わるまで待ってるから。

そうシェリアが言ってから、もうすぐ三時間。


「私が待つって言ったんだから。それなのに、邪魔してごめんなさい」
 
「いや、休憩にはちょうどいいかもしれない。シェリア、一緒にお茶でもどうかな」

「ええ」


罪悪感を含んだ彼女の表情を笑顔に変えたくて、アスベルはシェリアの髪を優しく撫でた。






どれだけ近づけば

満足できる?
近すぎるから生まれる小さなヤキモチ。









E N D



2009/12/10



***

グレイセス発売記念で、初挑戦してみました。
キャラ違うな……と書く度にへこみ、完成させました。
少しでも楽しんで頂けたのなら、嬉しいです。
お付き合いありがとうございました。

 

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