TOG・CP

□背伸びしたい恋心
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窓の外を眺めるシェリアの頬は、めいっぱい空気を詰め込んでいる。

勢いよく吐き出したソレは、窓ガラスを白く染めた。

シェリアはどこか泣いてしまいそうな表情で、唇を尖らせる。

帰ってきたら、思い切り文句をぶつけてやると気合いを入れた。

そう素直に帰って来ないのが、あの二人だ。

どうせいつものように、アスベルがヒューバートを連れ回しているに違いない。

その仲間に入れてほしいと何度頼んだだろう。

結局、自分は仲間外れだ。

それは、シェリアの体調を配慮してか。

それとも、彼女が“女の子”だからか。

再び膨らんだ頬は、誰かの指に潰された。


「何て顔してんだよ」


ニッと笑うアスベルに、苛立ちやらトキメキやら、色々な感情が積もる。

アスベルから少し遅れて、ヒューバートもやって来た。


「もう!」


文句の一つでも言いたいところなのに、言葉がすべて消えてしまっていた。

腰に手を当て、右手で指をさす。


「アスベルもヒューバートもズルい」

「何だよ、ズルいって!」


その言葉が気に入らなかったのだろう。
 
アスベルも不機嫌に表情を作る。

その空気に耐えられなかったのか、別の理由か。

ヒューバートは一言断りを入れて、その場を去った。

何となく空気が重いような気がする。

けれど、気のせいだろう。


「なあ、シェリア」

「何?」

「おみやげ」


アスベルはシェリアの前に右手を出した。

強く握られた右手。

虫の類いではないだろうか、とやや警戒してシェリアも右手を出した。

ポスンと落ちてきたのは、七色に輝く小石。


「……きれい」

「だろ? お前、こういうの好きだもんな」


両手を頭の後ろで組み、得意気に笑う。

本当にアスベルはズルい。

何も言葉が浮かばなくて、手に持っていたリボンを彼の手首に巻く。

綺麗な蝶々が出来た。


「何だよ、コレ!」

「お礼と約束」

「はあ?」
 
「今度は、私も一緒に連れて行ってね」


機嫌よく笑うシェリアに対して、アスベルは浮かない顔。

そんな顔を気にしないで、シェリアは「約束だよ」と右手の小指を立てた。






背伸びしたい恋心


貴方との思い出を数えきれないほど、作りたい。








E N D



2010/01/09



***

違和感はスルーの方向で。
書きやすいのか、書きにくいのか、よくわからなかった。
楽しかった……ってことは、書きやすかったのかな?
機会があれば、また挑戦。

 

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