TOG・CP

□先の読めない物語
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ソファにうつ伏せに寝ているパスカルは、足をバタバタ動かした。

そんなに大きなソファではないから、こうして見ていれば窮屈そうに見える。

床に落ちた本を引き上げるために、さ迷う右手。

起き上がればいいのに。

その言葉を声には、出さなかった。


「ねえ、弟くん」


静かになったから寝ていたのかと思っていたが、そうではなかったらしい。

半分くらいソファに吸収された、籠った声。

数秒返事を躊躇い、無視することも心地悪いと口を開いた。


「……何ですか」

「お腹すいた〜。あと、返事が遅い〜」

「ぼくに言う必要などないでしょう」

「バナナパイ〜、早く〜」


彼女は自分より年上のはずだと今更ながら、疑問に思う。

それは、本当なのだろうか。

どう見ても、知識やら戦闘能力やらを除けば、完全に年下に見える。

わざとそういう態度をとるのだろうか。

ヒューバートの興味を、好奇心を煽るために。


「考えすぎですね」

「何の話?」

「!?」


目の前、しかもかなり近い位置にいた彼女。
 
椅子から落ちそうになった。


「いきなり意識飛ばさないでよぉ。心配したじゃない」

「それはどうも」

「むぅ……」


膨れっ面を見せて、パスカルはヒューバートから離れた。

ブツブツと何か言っている。

文句か、それとも……。


「ねえ、弟くん」

「今度は何ですか?」

「さっきの続き。ていうか、お腹すいたって言ってるじゃん」

「勝手に一人で食べてきてください」


「冷たい〜」と叫ぶパスカルを残して立ち上がる。

読みかけの本には、栞を挟んで。


「ぼくは少し出かけるつもりなんですが、パスカルさんはどうしますか?」

「お? デートのお誘い?」

「まさか」

「別に何でもいいけど、もちろん弟くんのオゴリだよね?」


ニッと笑うパスカルに、ヒューバートは意地悪な笑みを返す。

当然ソレには、パスカルの言葉を否定する意味を含ませていた。


「何でもいいよ。あたしのお腹を満たしてくれるなら。ほら、早く行こ!」
 
「引っ張らないでください!」


転びそうになるのは、気を緩めている証拠。

軍人である自分が情けない。


「ほら、早く来ないと置いてくよ?」


腕を絡めて言うセリフではない。

いつか完全な勝利を突きつけてやるとか考えながら、今は賑やかな彼女に付き合うことにした。






先の読めない物語

動き始めたココロ。
行き先はもちろん……。









E N D



2010/01/11



***

何となく、チャレンジ。
短時間で書いたせいか、失敗した感満載。
書くのは楽しかったので、いつかまたリベンジを。
タイトルに一番時間がかかった……。

 

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