TOG・CP
□買い物と言う名の、口実
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「ヒューバート、ちょうどいいところに!」
買い物袋を抱えたシェリアだと認識すれば、ヒューバートは乱暴にそれを奪った。
ぱちくりと大きく動く瞳に、一言謝罪を呟いて。
「買い出し、大変なんじゃ……」
「ううん。平気よ。買い物は好きなの。ありがとう」
重そうな(実際持ってみれば、かさばるだけで見た目より軽い)荷物を持っていたにも関わらず、シェリアはいつものように微笑んだ。
「あとは……」
「まだ買い物をするんですか!?」
「え? うん。今で三分の一くらい終わったかしら」
一体どれだけの買い物を頼まれたのだろう。
頼まれたわけではなく、自ら引き受けたのか。
「一度、これを置いてきます」
「ん?」
「残りの買い物に付き合いますよ。荷物、多いのでしょう?」
シェリアの瞳がキラリと輝く。
手伝ってくれてありがとう、という意味だけではない。
これは、人手があるなら……と更に何かを追加している顔だった。
それは予想の範囲内だったから、気にしない。
待ち合わせの店を決めて、二人は別れた。
宿に戻れば、誰もいない。
借りた部屋へ荷物を放り込むと、急ぎ足で待ち合わせ場所へと向かった。
「……何をしているんですか?」
「ヒューバート」
数人の男に囲まれていたシェリアは、彼の姿を認めると安心したように、縮こまっていた体を解放した。
明るい店内には、様々な雑貨が並んでいる。
ぱっと見た感じでは、シェリアが好みそうな店。
無意識に睨んだせいか、それとも服のせいか男たちは、直ぐ様店の外へと逃げて行った。
「一体、何があったんですか?」
二度目の、シェリアに対しては一度目の問いかけ。
「それは、ほら。乙女の秘密?」
「シェリアが言いたくないのなら、無理に聞きません。買い物の続きをしますか」
「ええ」
目当ての品はすぐに見つかり、買い物は想像していたより早く終わった。
ただ、荷物の量は想像以上だった。
「はい。ヒューバート」
手のひらに収まるくらいの小さな青い紙袋を渡された。
随分軽い。
疑問符が浮かんでいたせいか、シェリアは笑った。
「今日のお礼」
「あ、ありがとうございます」
「お礼を言うのは、私の方よ。手伝ってくれて、本当にありがとう。私、ヒューバートと話したいことが、まだまだあるんだからね」
離れていた、子どもの時間で測れば随分長い時間。
それは簡単に埋められるものではない。
……とヒューバートは思っていた。
その距離を、シェリアは簡単に埋めてしまうのだった。
買い物と言う名の、口実
変わらない所もあるけど、やっぱり大人になったのね。
ですから、あまり昔の話は……。
E N D
2010/02/09
***
去年の10月に書きかけていたモノをようやく完成させました。
まだ違和感があるような……。
楽しんでいただけたのなら、嬉しいです。
書いてた文章が消えた時は、どうしようか泣きそうになった。