小説2

□あなたの贈り物 06.12.24
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 自分の部屋に戻った村田は、そこに鎮座している物体を見てフォンヴォルテール卿の顔真似のようになった。

「……なんの冗談だい?」
「貴方にお届け物です」
「チェンジ」

 満面の笑顔を見せてきたソレには短い言葉だけ戻る。目線を外したまま村田は脱いだ黒衣と身体をどさりと長椅子に投げ出した。
「ちぇん…?」
 知らない言葉に首を傾げた拍子に、橙色の髪に巻かれていた桃色のリボンが揺れる。いや巻かれているのは髪の毛だけではなく、逞しい太い首にも筋肉を纏った腕にも、そして下半身にも絡み付いていた。
 嫌になるくらいにこれでもかと全身に桃色リボンを巻いた、なのにそれ以外には何も身につけていないその姿はまさに変態。

「ったく見苦しいな」
「えーだってハダカでって貴方が陛下に言ってたんじゃな〜い」
「本当にするヤツがあるか」
「いいから受け取ってくださいよぉ」
「欲しくない」
「そぉんなコト言わないで猊下、ほらオレの愛を受け取って?」
「愛は現金で欲しいですから」
「うわヤっな感じ」
「それはこっちの台詞だ!」
 吐き捨てたキツイ言葉もヨザックには通じない。そもそもこんなことをしている変態がこれしきで諦めるわけがなかった。
「せぇっかく猊下のために用意したのになー」
「いや誰も頼んでないし」
「もうっ、つれないんだからぁっ」
 ビシリと突っ込んでも堪えない変態は隣に座ってこようとする。村田はサッと長椅子から立ち上がって外したネクタイをその顔面に投げつけた。
「見苦しいもん見せるのは止めろっていつも言ってるだろう。パーティーの後で疲れてんだよね僕」
「ええだからこそ癒しを、と用意したわけですが」
「………」
 お前の頭に涌いているのは蛆か蝿かフンコロガシか?とでも言いたげな冷めた視線を、しかしヨザックはネクタイと同じように平然と、しかも嬉しそうに受け止めた。

「やっとオレの顔をちゃんと見てくれましたね」
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