小説2

□S-1 06.12.31
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「レっディースえーんどジェントルメーーン!!」

 寒風吹きすさぶ季節だというのに、そこはとてつもなく暑かった。
 むんむんとする人の熱気の渦が包み込んだ会場に突如響き渡った大きな声は、観客達を一瞬静まらせた後で雄叫びをあげさせる。

「みんなーっ、今日も燃えてるかーい!?」

 中央に設えられているリングの上に居るのは、稀有な色の髪と瞳をした八十代くらいに見える青年だ。しかしこの場の全ての者が彼は十六歳だと知っている。
 その十六歳の少年は、髪に合わせたかのような牒の形のものなどをキキリと首に飾っていた。ズボンも靴も同じ色で、ほとんどの者が初めて目にした黒衣を纏った麗しい姿に溜息が止まらない。
 だがそんな皆さんのうっとりした眼差しを吹き飛ばすような怪しい笑顔を顔中に浮かべた大賢者様は、弾んだ声で休みもせずに喋り始めた。

「さーあやってきましたよ世紀の対決! 今夜は大晦日ですね〜。大晦日といえばですね、僕らが居た地球という世界ではね、古代から筋肉隆々のゴッツイ男共が命懸けで闘うという日なんですよねー」
「こっこら、お前はまたそんな嘘をつ…もがっ」
「ああ陛下ってば懐かしさのあまりちょっとおかしくなってるね」
「モガー!?」
 引っ張り出されて横に無理矢理立たされていたもうひとりの双黒が否定しようとするのもなんのその、口を塞いだままの村田はにこやかに続きを喋くり倒す。

「というわけでっ、今ここに世紀の金網サンダーデスマッチの開催よ〜〜っッ!!」

 煽るような村田に客は次々にオオーッと拳を突き上げる。満足そうな少年はその場で手を振りながら、くるりと回って全席に愛想を振り撒いた。それからあるひとりを指し示す。
「この番組の提供は前魔王、現上王陛下のフォンシュピッツヴェーグ卿ツェツィーリエ様でーす。さあツェリ様、是非一言お願いしますっ!」
 リングの一番前に座っていた彼女はすぐに立ち上がり、村田と同じように、にこやかに手を振った。

「あたくしはぁ、筋肉だあい好きっ!」
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