小説2

□新春お笑いショー 07.1.1
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 唐突にチャンカチャンカチャンという音楽が鳴り響いて檀上に三人の男が出てきた。
 突然始まった催しに賑わっていた王主催の新年会会場は少しだけざわついたが、その出てきた人物達が人物なだけにすぐに黄色い歓声に変わった。

 声援に見守られた中、三人の中で一番小さいくせに一番態度がでかい少年が片手を上げた。

「ど〜も〜、大が付く賢者の健ちゃんでぇ〜す!」
 続いて柑橘色の髪の男も手を上げる。
「ど〜も〜、大が付く身長と女優のグリちゃんでぇ〜す!」
 だが残りのひとりは戸惑った顔で立っているだけだ。両側から肘で突付かれてからやっと口を開いたが、
「ど、どーもー、大の付く……大の付く…」
と彼の次の言葉は出てこない。その様子に横から二つのハリセンが飛んだ。

「早く言え!」
「んもーウェラー卿ってば挨拶もマトモに出来ないの!?」

 バシンという大きな音にそこかしこでどよめきが上がる。
「……し、しかし猊下、いきなりこんな舞台に上げられて大の付く自己紹介なんて普通は思い付かないでしょう?」
「だーもう、ノリが悪いなぁ隊長は」
「そうだよノリわっるーい」
 腕を組んで頬を膨らます村田とはコンラートを挟んで反対側にいるヨザックは、呆れ返ったように天を仰いで溜息をつく。
「あんた大が付くのいっぱいあんだろー、胡散臭いとかスケコマシとかさ」
「…おいヨザ」
「あと腹黒いとかね」
「…猊…」
「それくらい芸人ならパッと思い付かないと。きみそんなだからギャグセンス皆無って言われるんだよ」
 今まで誰も言えなかった事を指まで突き付けて本人にドキッパリと告げた村田にまた会場中がどよめく。言われた方は晴天の霹靂という顔をして迫った。
「…ちょっと待ってください、誰がそんなことを?」
「誰ってきみの大事なユーリ陛下が言ってたよ。きみは顔も性格もいいのにギャグだけは寒いって」
「なっ…」
 引き攣ったところに客席から「バカ村田、お前それは言うなっつったろ!?」と本人の声がして、コンラートの表情がピキリと固まる。
 しかし大賢者様にヨザックも負けてはいない。遠慮無しに彼もキツイ言葉を投げつけてきた。
「あーりゃりゃー。やだわ陛下ってば、ま〜だこいつのコト誤解してんのねぇ」
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