小説2

□眞魔国的日常 06.10.25
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「しっかし早いよな」

 唐突に呟かれた言葉にコンラートがなにがですと尋ねると、有利は遠くを見ていた視線を目の前の男に合わせた。
「もう一年なんだってさ」
「…ああ、そういえばそうですね」
「いやーでもしかしよく一年ももったよなー?最初はさ、こーんなおれが王様だなんて何のドッキリかと思ったけど、でも実際に一年も経っちゃったとか聞くと、なんか感動するというよりビックリっつうか…でもそれもこれも優秀なみんなが居てくれたおかげだよな。こんなへなちょこなおれを大勢の人が支えてくれてるからやっていけてるんだな」
 うんうんと腕組みして自己完結している有利は、みんながいなかったら一月も持たなかったかもと苦笑している。
「そうですね」
「うん」
 優しい笑顔を向けられて照れ臭そうに俯く有利は赤くなっていた。そんな可愛い顔を笑顔で覗きこんだコンラートから彼は軽く目を逸らして、頬を掻きながらぼそっと呟く。
「でもさ、やっぱあんたが…」
 言いかけて、しかし「いやなんでもない」と慌てて手を振る有利にコンラートは首を傾ける。
「なんですか?」
「いいんだ」
「気になるじゃないですか」
「いいんだってば!」
「教えてくださいよ」
 どこまでも笑顔で迫るコンラートに根負けした有利は、う〜と唸ってから、仕方なさそうにコソッと耳うちしてきた。

「やっぱおれさ、あんたがいないとダメみたい?」

 へへっと頭を掻く少年に、言われた言葉をやっと頭で理解した男がとろけた顔で手を伸ばそうとした時、辺りにアルトの声が響き渡った。

「何をしているこの尻軽め、コンラートとくっ付くなっ!」

 翠の瞳を怒りに燃やして金の髪から湯気まで噴き出しそうなヴォルフラムが、凄い勢いで駆けてきて有利の首を締め上げる。
「ちがっ、違うってば、くっ付いてないから、だから苦しっ…」
「貴様も貴様だ!弟の婚約者に手を出そうなどと貴族として、いや魔族として恥ずかしいと思わないのかっ!?」
 自称でも婚約者なら少しは丁寧に扱ってあげれば?と言いたいくらいに有利を揺さぶり倒しながらヴォルフラムは横の男にも攻撃を仕掛けるが、しかしその相手の返事に彼は詰まった。
「おや、俺を兄と認めてくれるんだ?」
「なっ…だ、誰が!お前なんかぼくの兄なものか!」
「他人なら何の問題もないんじゃないのかな、たとえ俺がユーリに手を出しても」
「なんだとう!?」
 目を剥いて叫んだ弟にコンラートは愉快そうに片目を瞑る。
「まあでも、お前が俺を兄上と呼んでくれるなら手は出さないけど?」
「ぐっ…」
「お兄ちゃんでもいいよ?」
「だ、誰がそんな事を言うかっ!!」
「ではユーリに手を出すとしようかな」
「ちょっ、コンラッドさんっ!?あんたそんな事ヴォルフに言ったら…」
「殺ーーすっ!貴様等二人とも殺すっッ!!」
「わーやっぱりー!?」
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