小説2

□慕情3 2012.2.14〜連載中 最新更新2014.6.11
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 屈辱感に苛まれながら口を開きかけた時だ。突然、眞王がカクンと均衡を崩した。

「おっと、少し使い過ぎたか」

 オレに使ってしまったせいで、また魔力が足りなくなったらしい。
 「まったく、この身体は」とか言ってるが、そう言いたいのはこっちだっつうの。そこまでして治療してもらいたくなんか無かったんだけど。どーせ全治二〜三週間くらいの傷だったし、治療したけりゃ軍曹どのの所に行く。野郎より女にやってもらうほうが嬉しいからな。

 心でブチブチ言いながら眞王を抱きとめようとした。足が薄くなった眞王も軽くよろけながらオレの肩に掴まる、と思いきや、彼が倒れた方向は女の群れだった。
 ……なんかわざとらしい感じするんだけど。だってよろけた先には兵士の中で一番の美人が居たし。その美人の肩にしな垂れかかるようによろけたもん、この人。
 だが眞王を盲目的に崇めている女は幸せそうに抱きとめる。慌てて他の女兵士達も駆け寄っていくもんだから、また女の塊が出来上がる。
 そんな中で眞王はこれみよがしに漏らした。

「まだ本調子ではないしな……どこか休める所があれば良いのだが」
「はあ!?」

 ナニ言ってんのこの人!?
 せっかく女豹の群れから助け出した苦労を台無しにしてくれやがった発言に、怒りを必死で飲み込んでいたら、抱きとめた女兵士が声を裏返しながら提案した。

「あのっ、私の家が近くにあるのですがっ! その、もしよろしければ、うちで御休憩なさって下さいませっ!! すぐそこですのでっ!!」

 ダメだこりゃ。町民も兵士も変わらねえよ。どいつもこいつも眞王にメロメロでやがる。
 顔を真っ赤にしての提案に、もちろん他の女からは非難轟々だ。

「ちょっと、なにそれズルイ!」

 街娘、いや娘じゃないのも一杯混じっているが、とにかくバチ当たり発言で追いやられた奴らがこれに黙っているわけがなかった。
 だが非難は外よりも中からの方が激しい。

「そーよそーよ、図に乗ってんじゃないわよ!」
「だいたいあんた前から生意気なのよね!」
「ちょっと湖畔族の血を引いてるからってさ!」

 怖っ。女って怖っ。
 兵士の仲間意識はどこ行ったんだよってくらい、関係のない血統の話まで持ち出して責めている。あ、血統は関係あるのか。ギュンギュン閣下を筆頭に、湖畔族は基本的に魔力が高いんだった。てことは、あいつらの中じゃ自慢になるわな。しかも美人ときてるから、他の奴らが僻むのもちょっと解るカモ。
 しかし眞王はキーキー騒ぎ始めた女どもを気にしていない。それどころか、にんまりとほくそ笑む。

「そうだな、邪魔するとしようか。お前の母や姉も美人……いや、魔力も高いことだし」
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