小説2

□痴話喧嘩 06.10.14
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 突然そんな事を言ってきたオカマに、なんでそこにウェラー卿が出んの? と虚をつかれたけれども、でも村田は顔に出さずに答えてやる。
「それはウェラー卿かな」
「ええっ、なんで!? なんであいつがアタシより勝っちゃうの!?」
「だって彼がいなかったら渋谷が悲しむだろう。だから彼の勝ち」
 橙色の眉がきゅうっと寄った。しかしまたヨザックは懲りずに質問してくる。
「じゃ、じゃあわがままプーとアタシなら?」
「それはやっぱりフォンビーレフェルト卿だね。理由は前と同じ」
「…親分とアタシは」
「フォンヴォルテール卿だ。理由は以下略」
「くっ…じゃあぎゅぎゅぎゅ閣下となら」
「きみ王佐に勝てると思っているのかい?」
「ア、アニシナちゃんとなら?」
「うーんそれはやっぱり彼女かなぁ」
「なんでぇ!?」
「だって渋谷は彼女の事、結構好きだもの。それに最愛の娘さんの師匠だし。ああ同じ理由でフォンクライスト卿の娘さんもきみに勝ってるね」
 次々に答えていくとヨザックは益々渋面をきつくしていく。だが村田は止めない。
「メイドさん達も彼女が懐いているから僕にとっては大事だなぁ。なにしろ大切な渋谷の愛娘だもんねグレタは。もちろんきみは彼女には全然敵わない」
「………じゃあ誰になら勝てるんです?」
 渋面がいじけた顔に変わった。それにわざとらしく考え込んでからこう言ってやる。
「そうだなあ……ダカスコス?」
「ダッ!?」
 村田の予想通りに彼は目を剥いた。そしてもう泣きそうである。
「あっ、でも駄目だ。ダカスコスは渋谷の大事な王佐が壊れた時にいなくてはならないんだったよ。だから彼もきみに勝ってるや」
 笑顔でトドメとばかりにそう言ってやると、ヨザックはみるみるうちに液体を瞳に浮かべて床に突っ伏した。

「うわあああん! アタシはダカスコスにさえ負けるのーーっ!?」
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