小説2

□あなたの贈り物 06.12.24
2ページ/4ページ

 こんな恰好なのに綺麗に男らしく微笑む顔と不意打ちのような台詞に、村田が不覚にも一瞬動きを止めた。その隙を見逃すはずがない男はそっと近寄って手を伸ばす。

「貰ってくださいよ」
「…いらないってば」

 胸に閉じ込めることには成功したものの、相手はまだ減らず口を止めない。
「コレ結構苦労したのになー」
「はぁ?なんに苦労できるんだよソレの」
「ココですよココ」
 ゴツゴツした指が下を指して、緩みかけていた村田の眉がまた寄ってしまった。
「……なんで立ってんの」
「だって小さいまんまじゃなんだかマヌケじゃな〜い?それにそのまま結んじまうといざって時痛そうだしー」
「あのねぇ」
「褒めてくださいよぅ、ずっと臨戦態勢維持すんのって難しいのよ」
「バッカじゃないの」
「ええオレはバカですから」
「赤ペンどこにやったかなー」
「きゃ〜、二口の怪物に喰わせるのはやめてェ〜ん」
「いやその前にハサミがいるっけ」
「やんげーかってばぁ、ホントに心無いコトばっか言うんだからー」

 ふざけた口調とは裏腹な丁寧さでそっと線の細い顎を持ち上げると、形の良かったはずの眉はまだ変な形をしているが、やっぱり村田は今度も抵抗はしなかった。目の前にある太い首に巻かれたリボンの奥に自分が贈った首飾りを発見したからだろうか、口元には笑みすら浮かべている。

「貰ってくださらないの?」
 包み込んだ頬を愛しさを籠めてなぞると、そんな指に目を留めてから黒い瞳が上を向く。
「あのね」
「それかオレにくださいな」
「…プレゼントはやっただろ」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ