目が覚めたらヨザックがいた。

 あれ〜、いつもならとっくに姿を消しているのになんでだろと、寝ぼけた頭でぼんやり考えていたら、視線の先に暗い窓の外があった。
 なんだ、まだ夜明け前なんだ。だからヨザックがまだ寝ているんだな。
 まだ布団から出なくていいという安心感と同時に、へえ〜という納得がいった。彼はいつも僕が起きる前に居なくなっているけれど、それがいつ居なくなっているのかというのは知らなかったからだ。共寝をした夜には僕はたいてい熟睡しているから、コッソリ抜け出ていったのに気づいたことがなかったんだよね。だって誰かさんのおかげで疲れてて眠いんだもん。いっつも朝までグッスリさ。
 でもそうなんだ。じゃあ夜が明けるまではこうして一緒に眠っているんだ。くーかーと、イビキとまではいえない寝息をたてて、こんなに無防備な顔で眠っているんだ、僕の隣で。
 なんだかちょっとくすぐったくて目を逸らしてみる。逸らしても暗い室内で見えるものなんか、しかも眼鏡っ子の命の源ともいえる視力矯正レンズが無い今は、近くの物くらいしかないけどさ。

 でもそのおかげで、規則正しい鼓動とリズミカルに上下する胸にほっぺたをくっつけたまま、僕はしばらくの間、どうしたものやら考えていた。
 寝相はいいはずが、なぜか抱き着いた格好で寝ていたらしく、今の僕はヨザックの首に腕を巻きつけた体制だ。なんでこんな格好で、とちょっと自分に呆れていたら、指に何かひんやりしたものが当たっているのに気付く。これはなんだろうと数回撫でてから、やっとそれが耳たぶだと気付いた。そして同時にしまった、起こしてしまったかもと焦った。
 だけどヨザックは目を開けなかった。どうやら熟睡しているようだ。こんなに長い間、彼の寝顔を見れるなんて思ってもみなかったので、なんだかとても嬉しい気がする。昼間にちょっとだけのつもりが、つい長時間寝てしまったことが、こんな時にこんな風に役立つとも、これまた思ってもみなかったけど。
 しかしちょっと気恥ずかしい。なんたって、僕たちは裸だ。
 まっ裸で、しかも自分から抱きついているというこの現実は、かなり気恥ずかしい。そういう状態のときでさえ照れくさいのに、こんな目覚めたての爽快感ですっきりとした頭のままで、自分から抱きつき続けているという今のこの状態は恥かしいなんてもんじゃない。
 けれども身動きしたらヨザックは起きてしまうだろう。優秀な軍人さんは気配に聡い。せっかく熟睡しているというのに起こすのは可哀相だし、もうちょっとだけこのままの体勢でいようかな。この空間はほんわりと暖かくて心地良いし。
 真冬ではないとはいえ、布団から一歩でも出たら凍えるような外気温なのに、室内とはいえ一番冷え込むはずの真夜中だというのに、ここはとても暖かい。
 羽根布団は普通でも暖かいけれど、このベッドは広すぎるから、一人で寝てると少し寒いんだ。眞魔国の羽毛製品は地球と違ってなぜか重たいしね。まあそれでも暖かさは変わらないけれど、でもどちらも入った当初はヒヤッとする。この部屋の寝具はさすがは王城だけあって基本的にシルクで出来ているから、余計にツルツルしてて冷たいんだ。少しだけ我慢すれば体温で温まってくるけれど、でも身体が触れてない箇所はずっと冷たいままなので、眠っている時なんかに丸まっていた足を伸ばしたりするとゾクッとする。
 けれど今はその冷たいのが気持ち良かったくらいに二人の周りは温まっていた。さっきちょっとだけ足先に触れたあの冷たさをもう一回味わいたいなあとか考えてしまうくらいに、ヨザックと自分から発生した体温で温まった空間は、なんとも形容しがたいほどの幸福感に包まれていて、凄く気持ちいいんだ。
 穏やかなまどろみが身体中を包んでいるから、このままもう少し眠りたい気分もするけれど、でもそんなことをしたらもったいないよなあ。だってヨザックが眠っているんだし。僕の隣で、僕の腕の中で熟睡、というか、爆睡しているんだから。

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