ころころと、とまではいかないが、4年前までは見たこともなかった様な笑顔や表情で彼と彼女は話していた。
「あ、刹那」
彼女、フェルトは食堂の入り口に唖然と立っていた俺に気付いて、そして不思議そうに首を傾げる。
「どうしたの?入らないの?」
「あ、いや」
フェルトの正面に座っているティエリアはふ、と口角を上げた。
「何を遠慮している?」
「遠慮、してはいない」
俺は地を蹴って、彼らの元に行く。
フェルトが座るスペースを開けてくれたから、彼女の隣に座る。
「意外だな」
「?」
フェルトは首を傾げた。
「お前達が笑って話してる」
入り口で唖然としていたのは、彼らの柔らかな声を聞いたから。
以前の彼らは口数が少なく業務以外に言葉を交わしている姿など見たこともなかった。
俺が言えたことではないが、ティエリアに至っては、クルー同士で馴れ合うなど考えられないことだ。
「ああ、そうだな」
ティエリアが納得したように頷く。
フェルトは懐かしむように微笑んだ。
「昔はティエリアが怖くて、近付けなかったもの」
「君だって、いつも無関心に見えてたさ」
「そうだったかな?」
「君は変わったな」
「ティエリアの方こそ、
すごく変わったよ」
二人のやりとりを、俺は目を丸くして聞いていた。彼らは本当に変わった。
トレミー内で、こんなに穏やかな空間が出来るなんて。
「でも、刹那も変わったね」
「…俺が?」
首を傾げる。
…俺は変わったのだろうか。
変わりたい、とは思うけれど。
「うん」
フェルトが柔らかく微笑んだ。
「そうか」と、俺は頷く。幼馴染みの彼女がそう言うのだから、俺はきっと変われているんだろう。
そんな俺を見てティエリアがくく、と喉を鳴らす。
「口数が少ないのはそのままみたいだな」
その言葉に思わずムッと眉間を寄せた俺を、フェルトとティエリアは可笑しそうに笑った。
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