ブック13

□イデア
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遠い昔のとある学者がこんな言葉を残していた。

身体は魂の牢獄である


その言葉は、友人が読んでいた分厚い本の中の一冊のなんとなしに開いたページに乗っていた。
ほんの少しの興味心で読み進んでみたが、当時の自分には難しすぎて、その学者が云いたかったことは少しも理解できなかった。

なぜ身体を牢獄だなんていうのだろう。
だって身体があるのは素晴らしいことだと思うから。

この手は何かを掴めるし、足は息づく大地を踏みしめれる。
走ることも出来るし、誰かを助ける時は身体はとても役に立つ。

 
 
魂は魂で別世界にあって、それが身体と結び付いただなんて、変な話だ。


だって、魂だけの存在なんて自分は信じてなかったから。

身体が滅びたら魂も滅びる。
天国や地獄なんて、信じない。だって誰もあるって証明出来てないじゃないか。


だから魂の世界なんてどこにもない。
身体は魂の牢獄なんかじゃない。





今も言葉の意味を理解はしていない。学者が云いたかったことは分からない。

だけど、魂が存在する世界があってほしいと、今、切実に願っている。



僕は、愛しい少女がこの世のどこにもいないことを認めたくないんだ。
せめて魂だけとなってても良いから、存在していてほしい。
僕がいつか身体を失った時、再び出会えると信じたい。
そう思わなければ、切なくて仕方ないじゃないか。

こんなにも想ってるのに。
会いたくて会いたくて仕方ないのに。


この想いの行き場はどこにもなくて報われることもないなら、この世界は残酷過ぎる。

せめて彼女の魂を僕のために残していて。
そうしたら、いつかこの肉体が朽ちたとき必ず会いにいくから。



イデア
朽ちるまで魂はどこにもいけないのなら、確かに身体は牢獄だ。







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