ブック13

□ラスト・ティアーズ
1ページ/1ページ





―私だけはお前のそばにいる―


温かく、柔らかな腕だった。
それを与えられる資格などないはずなのに、振り払うことも出来ず受け入れてしまうのは、
どうしようもなく心が冷えているから。
今だけだから、と自分に言い聞かせて、目を閉じる。

暗闇に浮かんだのは彼女の笑顔だった。






時はもう戻らない。
誰もが承知の現実を彼女は戻そうとした。
自分もそんな彼女の手を取った。
けれど、結局それは叶わなかった。ただそれだけの話。
失われたものが、あまりにも大きかった。ただそれだけの話。


ただ、それだけの、話だ。





「…王の力はお前を孤独にする、そう言ったことを覚えているか?」

「……ああ」


コツン。
C.C.は未だ震えるルルーシュの頭にあごをのせてくる。


「自らの行動によって、お前は一人になってゆく」

「……」


応えることすら出来なかった。


「それでも、もうお前は進むしかない」



失われた未来、失ってしまった命。
時を戻すことは出来ない。ならばもう、進むしかない。
それが果てのない、棘道だとしても。



「哀しみはここに置いていけ。そして次にあの仮面を被る時は、もう止まるな」


「……ああ、わかっている…」


「ならいい。
今だけ、この腕を貸す」



「…ああ、ありがとう」



無機質な声とは裏腹に、自分を包み込む力が強まった。
彼女の腕のなかで、ルルーシュは一筋の涙を流した。




これが最後。
もう嘆きはしない。
後悔もしたりしない。
涙ももう流さない。

今この場で全て置いて行く。
哀しみも共に。



「さようなら…」


失った人達に別れを告げ、立ち上がれ。
それが己のすべきこと。







「…C.C.、もういい。もう大丈夫だ」


「…そうか」


「ああ。もう行こうか」


ゼロの仮面を手にとる。
C.C.はふ、と笑って自分に問う。


「どこに行く気だ?」


「そうだな…。ああ、そうだった」


道は一つしかない。




「修羅の道を」





(それが我が道だから)











end.

戻る

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ