ブック13

□眠るきみに秘密の愛を
1ページ/1ページ







眠る最愛の妹の髪をなでながら、ルルーシュは手元の絵本を見る。
妹のナナリーはもう絵本を読むような歳ではない。けれど、優しい春の色を持つあの子を懐かしんだのだろう。
ナナリーとあの子が大好きだった童話を読み聞かせてほしいとねだってきた。
今も昔も童話の類いに興味などないが、可愛い妹に頼まれては断ることなど出来ない。
ルルーシュはいつもわざと呆れた顔をしながら彼女達のために本を読んだ。









 
 


「…………ぁ、れ…」


いつの間に寝てしまったのだろう。ふかふかのクッションに埋もれながら、ルルーシュは目を開いた。

隣を見ると、優しい春の色をした髪が映る。規則正しい寝息をたてる彼女は目覚める気配はない。
ルルーシュと彼女に挟まれた場所で寝てたはずのナナリーはおらず、その場所に温かさは残っていなかった。

(ナナリーが一人でどこか行くなんてめずらしいな)


ルルーシュはそっと手を伸ばして彼女の髪に触れる。
ふわふわの髪は柔らかくて軽い。


なぜだか分からない。
どうして、なんて自分が聞きたい。

何かに導かれるよう、ルルーシュは体を起こして、彼女の髪に口付けた。

口付けた時に鼻を掠めた淡い香り。花のような、優しい匂いだ。


その香りがとても愛しいと思う。


「………ん〜……」


鈴のような声が耳に届く。
ハッとして顔を上げると、青紫色の瞳が開きはじめていた。


「ユフィ…っ」


「…ルルーシュ?…おは、よう…」


目を開けた先にルルーシュがいることに一瞬驚くが、ユフィはすぐに嬉しそうに微笑む。

途端にルルーシュは顔を真っ赤に染め上げた。
ユフィは突然赤くなったルルーシュに意味が分からず首を傾げる。

















眠るきみに秘密の
(どうしたの?ルルーシュ)
(べっ、べつに!!?)










戻る

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ