ブック13

□嘆きの声は世界に飲まれて消える
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「君はあの方のために何をしたんだい?」


ロイドが薄く微笑む。
彼の淡い色素の瞳から感情を読み取るのは難しい。
だからスザクは目を見開いたあと、少し伺うように彼を見た。


「、…と言いますと?」


「ユーフェミア様が亡くなられた時、君は何をした?」


あの方が亡くなってからの1年、君は何をしてきた?

ナナリー様が行政特区を拓いた後、君はどうしてた?

フレイヤを放ってしまった後、君は何を考えた?


「……………」

「あの方は復讐なんて望まない人だよね?でも君はゼロを“殺した”。
それにあの方が君に願っていたのは、普通の少年として過ごすことだったよね。でも君は皇帝直属の騎士になった。
あの方の想いを継いだナナリー様を君は助けるべきなのに、中華連邦へ向かってしまった。
フレイヤ投下後、シュナイゼル殿下に付いて、シャルル皇帝を引き摺り下ろそうとした。

さて、君はユーフェミア様のために何をした?」

「……………」



スザクが押し黙る。



―ゼロレクイエム―
cの世界から戻ったルルーシュとスザクが出した答え。
彼らはそれをロイドに告げた。
それに対して彼は驚いた様子もなく、いつもの飄々とした笑顔でスザクに冒頭の言葉を投げ掛けたのだった。


「世界中の憎しみをルルーシュ殿下と君に背負わせて、救世主ゼロに討たせる…ねぇ」


ルルーシュは自分が憎しみの対象になって世界を一つにし、
自身の死によって、今まで自分が招いた哀しみを終わらせる。

スザクはルルーシュを討つことで悲願だった敵討ちをし、
枢木スザクではなくゼロとして誰にも姿を晒さないことでルルーシュを討った事への罰を受けることになる。


生きる事を望んだルルーシュと死ぬ事を望んだスザクにとって、それは何よりの罰になるだろう。



「…結局君は、君たちは独りよがりなんだね〜」


「それはどういう意味だ」


ルルーシュが目を細めた。
ロイドが何を言いたいのか、わからない。


「ただ君たちの幸せを願っていた人の気持ちを、君たちは踏みにじってるんじゃないかなってね〜」

「……っ」


ルルーシュが目を見開く。
その瞳が、傷付いた様に色を無くす。
それに対して、ロイドは笑みを深くした。


「ゼロレクイエム。立派な計画じゃない〜。自分を犠牲にしてまで世界を救おうなんてさぁ。
美しい話だよねぇ。

…君の幸せを願ってた人もいたっていうのにね」

「………」


ルルーシュは俯いて、歯を食いしばる。
自分は、彼女をあの時も今も裏切っているのだ。


「ロイドさん、計画が無事進行すればルルーシュは全世界から憎しみの対象にされます。
ルルーシュの存在を大きくすれば、ユフィの汚名は過去に埋もれます。それが僕達が彼女に出来るせめてもの」

「そんなの意味があると思う?」

「え?」


「いくら陛下の悪名が高くなったって、あの方はいつまでも“虐殺皇女”のままだよ。
真実を知る二人は永遠に口を閉ざして、本当の事が明るみになる事はない。

あの方の悪名も、陛下とともにいつか教科書にのるだろうねぇ、魔女のまま、永遠に、ね」


「………………」


「“それが僕達が彼女に出来るせめてもの”?償いだとでも言うのかい?
それはただのエゴだよ、スザクくん」



スザクもルルーシュも押し黙った。
ロイドの言葉が胸に刺さる。


「スザクくん。ユーフェミア様の騎士であったなら、君はゼロレクイエムなんて事をするべきじゃなかったんだ」


ロイドは相変わらず笑顔のまま眼鏡に触れた。
「スザクくんは生きるべきだったんだよ。それは陛下も同じだけどね。
それがあの方に報いる事になるんじゃないの?」

「……それは、」

「君はユーフェミア様の騎士失格だよ」


「!!!」

「ロイド伯爵!」


「でもね、スザクくん。そんな君を、ボクは結構好きだったんだよ」


スザクが目を見開く。
ロイドを見ると、彼は哀しそうに微笑んでいた。


「君は誰かのために、と言いながらいつも自分のためだった。
ユーフェミア様の敵を射ちたいのも自分のため、あの方が必要なのも自分のため。

そんな自分勝手な君が見てて楽しかったんだよ」

「ロイドさん…」


「だから残念だよ、その決意は」



そこでロイドは席をたった。
スザク達に背を向けて部屋を出ようとする。


「ロイドさん!」

「協力してあげるよ〜。
…………でも忘れちゃいけないよ。
スザクくんの、君たちの幸せを願ってた人がいたこと。君たちはその願いすら裏切って世界を敵に回すんだからね」



「…………」

「ロイド伯爵…」



「じゃあ、ボクは部屋に帰るよ。バイバーイ」












きの声は世界に飲まれてえる
(忘れちゃいけないよ、君たちも、そしてボクも)









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