ブック13

□ブルーバード
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世界は変わる、優しい世界へと。






手のひらに一羽の鳥がいる。
ブリタニア帝国代表ナナリー・ヴィ・ブリタニアはそれをそっと空に投げた。

薄手の紙で織られたそれは頼りなく思えたが、彼女の予想を超えて天へとゆっくり昇っていく。




青々とした空を、深い青い鳥が飛んでいく。
ナナリーから少し離れた後ろで、漆黒の衣装を身に纏った人物が見ていた。
名をゼロ。人々からは「正義の味方」や「英雄」と称されている。彼の正体は、初めて彼が表舞台に姿を現した時からずっと謎のまま。
ナナリーは鳥の羽ばたきを見つめながら、ポツリと呟いた。


「日本では、青色の鳥は幸せを運んでくる縁起のよい生き物だと言われているんですよね?」


背後に控えていたゼロは首を傾げる。


「あり得ないことでしょうが、あの鳥が空を突き抜けて、あの二人に届けば良いのに…と思います」


ナナリーは振り返って笑った。
そこには、この青い空とは不釣り合いな漆黒がいる。
ゼロの正体をナナリーは知っていた。よく知っている、大好きな青年。

まだ一度として、その顔を見たことがない。

彼から仮面の中は生涯、決して誰にも見せることないと、いつか告げられた。


それを聞いて、彼の過酷な生き方に涙した日がある。

―あまりにも孤独で、辛い…


そう嘆いた彼女の手をとり、ゼロは言った。


『これが、俺が選んだ生き方なんだ。
ユフィやルルーシュの分まで、君を守りたい。あの二人の分まで、優しい世界を造りたいって心から思ってる。
だから辛いと感じたことは一度もないよ』


ナナリーのよく知る彼の声だった。


『お願いだ、ナナリー。
ユフィとルルーシュが目指した優しい世界を、君にも。』

彼に頼まれるまでもないことだった。

姉が死んだときと兄が死んだとき、ナナリーは誓ったのだ。
彼女の、彼の意思を継ぐのだと。




「いつか私が、優しい世界を造れたら、お二人は笑ってくれますか?」


「…ええ、きっと」


ナナリーは車椅子をゼロの前まで動かして、手を差し出す。


「私、お兄様とユフィ姉様に笑ってほしい。だから世界を変えてみせます。
そのために、ゼロ。私を手伝ってくださいますか?」


「っ」


差し出されたナナリーの小さな手に、漆黒の手が重なった。
その手が少し震えている。


「…イエス、マイロード」


彼の泣きそうな声に、ナナリーは瞳を瞬かせた。











世界は変わる。
優しい世界へと、変えてみせる。


彼らの意思を受け継いだのだから。









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ナナリーとスザクの契約話。「イエスマイロード」と言わせたのは「ユアハイネス」はユフィだけの言葉にしたかったので。
お粗末様でした!


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