ブック13

□それを愛と言う
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あの人の笑顔を見ると自分も嬉しくて、優しい気持ちになれる。
哀しい顔はあまり見たくないと思うし、哀しみからあの人を守ってあげたいと思う。
何度躓いても歩いて行こうとする強さに憧れ、その姿勢に心から尊敬をしている。

あの人の大胆な行動にはいつも心配させられるけど、でもあの大胆なところに何度助けられたかな。


共に歩んで行きたくて、その存在を守りたくて、温かな笑顔が見ていたくて。

この気持ちを何と呼べば良いんだろう?



「それは“愛”よ!」

「…あい?」

「そう、愛っ。L.O.V.Eの愛よ!」

「…愛、ですか」


親指を立てて自慢気に笑う金髪の少女を、スザクは翡翠の瞳を瞬かせて見つめる。
そして


「…っええええぇえ!?」


腹の底から叫んだ。





【それを愛と言う】




放課後の誰もいない教室の自分の席でスザクは溜め息をひとつついた。
昼休みに生徒会長であるミレイと交わした会話が頭から離れない。


改めてあの少女の手を取ってからスザクは変わった。
相変わらず過去の自分が赦せなくて、過去を償いたくてもがいて、でもいつも力が足りなくて、そんな今の自分がまた嫌で。

 
でも、こんな自分でも良いと思える。あの少女が、そう思わせてくれた。
こんな今の自分に、私が好きになる、と言ってくれたから。

人に好かれることなんか、必要ないと思っていたのに。
あの少女の気持ちを受けて、その気持ちに自分の心が温められていくのを感じて、本当は欲しかったんだと気付いた。

優しくなんかしてほしくなかった、物同然に扱ってほしかった。
でも、認めてくれた。それがどんなに切なくて、嬉しかったことか。



言葉に出来ない。
溢れかえってしまいそうな感情。


それは愛だと言われて本当に驚いたけど、それ以上にすとん、と心に落ちてきた。
妙に納得してしまった。

友愛も親愛も恋愛も敬愛も全部ひっくるめて、あの少女をスザクは愛している。



「愛、か…」



あの少女に向かうこの想いは間違いなく愛なのだろう。
だってこれ以上の想いをスザクは知らない。
この想いが愛でないなら、愛という想いが分からないほどに。




(愛してる、ユフィ)





きっと、伝える日が来ることはないけど。
でもずっとあの少女の傍を歩むことは出来るから。
ずっと自分が守っていくから。




(愛してるよ)



 
いつまでも傍で、笑っていて、愛しい人。











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