――技術革命に成功した近未来、人間とロボットが共存する世界があった。
誰もがある程度の機械操作を学び、修理技術も民間向けの専門業者は姿を消した。
街に出れば道を歩く半分はロボット。そんな世界で、ガラス玉みたいな目をしたそいつと出逢った。


「それでは行ってきます。緑間くん」
「ああ、気を付けるのだよ」
 研究所の重い重い扉を開けて、黒子は街に出た。試運転も今日が三回目である。四肢の可動域、問題なし。視覚レベル、問題なし。音声出力、熱感知問題なし。緑間のメンテナンスは今日も完璧だ。
 緑間真太郎、と言えば一部の界隈では名の通った技術者であった。幼いころから大人顔負けのロボットを次々と造り出し、様々な賞を獲得し、その最年少記録を塗り替えてきた。そんな彼が今回造り上げたのは人型アンドロイド。『いかに人間らしく人と接することができるか、人間の喜怒哀楽を理解した上で状況判断能力をどれだけ人工技術で補えるか』ということが開発目的である。その試作品はもうすぐ四桁になろうとしていた。
 その中の九六五体めの試作品、それが黒子だった。


◇◇◇


「あれ」
「あ」
「お前昨日の」
「……どうも」
向かいから、昨日会ったジャージ姿の赤髪の彼が走ってきた。視線が合って、黒子は立ち止まりお辞儀をした。
「……おでかけですか?」
「は?」
「走っていたので」
「あー、これからストバス!」
「す…?」
「ストリートバスケ!」
「バスケットボール、ですか」
「そうそう。お前スポーツとかする?」
「したことありませんね」
「マジで! もったいねーな……あ、やべえ遅刻」
「あ、すみません。引き留めてしまって」
「いや、じゃあな! あ、そこの路地入ったところでやってるから興味あったら来いよ!」
「え、あの」
 手をひらひらと振りながら彼は昨日と同じように背中を向けて走り去って行く。
(バスケット……高尾助手に聞いてみましょうか)



―――――


ブラウザバックでお戻りください。






[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ