白き刃
□白い闇に飲まれて
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『待っていたぜ、一護』
そう聞こえたのは一瞬、その後の記憶は……――
目を覚ましたのは知らない世界。目の前に広がる世界に俺は焦り、あたりを見渡した。見る限り、現世でも尸魂界でもない。
複数のビルはたてと横が反対になっており空には途切れ途切れ雲があった。その地平線に奴はいた。
真っ白は闇。俺の目を覆ったその闇の中心に一人の人。
『…ぼぅっとしすぎじゃねぇか?』
「なっ…?!」
背後から声が聞こえ振り向けば奴が斬月を俺の首元に差し向けてたっていた。反射的にかわすも運悪く目の下を少し切られてしまった。
『余裕かましてんじゃねぇよ…一護』
声がするほうを振り向くたびに仕掛けられる攻撃をかわし続け俺は奴を見ることさえ出来なかった。
だが、何度目かの攻撃。奴に隙が出来た。
『……お?』
「くっ…」
手にした斬月を鋭く奴へと突き刺せば顔をかすっただけで。それでも奴は平然と俺に話しかけた。
『もう終いか?一護』
「う…煩ぇ」
『強がりだけじゃかてねぇぜ』
「テメェ…誰だ」
『俺の名前は…琳。テメェの弱さから生まれた虚だ』
「よ……弱さ…」
琳の言葉に目を見開き足が震え始め、金色を帯びた瞳に見られて俺の体は強張った。
「り…ん、どうやったら……俺は強くなれる…?」
『俺に何もかも任せちまえよ』
「……」
『俺なら何もかも倒してやるよ。テメェの敵も』
斬月の布をもってそれを振り回しながら俺に言った。
『さもねぇと……テメェ、死ぬぜ?』
「…うっ」
瞬間、放たれた斬撃。幸い、顔の横を掠め後ろのビルを破壊した。
『さぁ、俺に任せろよ。一護』
「……琳」
琳の名を呟いた瞬間、目の前には白い闇しかなく俺はそっと瞳を閉じた…
「やっと…やっと、手に入れた。お前の体も心も……」
琳は笑いながら呟いた。
「一生そこで見てろよ?一護。お前の仲間は俺だけなんだから……愛してるぜ?」
呟いた刹那、目の前に写るのは白い悪魔と赤い死神だけだった…――
手に入れるためなら何でもしてやる。
どんな手を使ってでもお前を必ず俺のものにしてみせる。
だってもうお前は当の昔に俺の闇に飲まれてしまったのだから…――
→あとがき