近き夢想空間への鍵
□大切な…
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暗い闇夜のなか、1人の少年―エレフは、人目のつかない森というには小さい木々の間にいた。
「あの変態神官、いつか絶対殺してやる。」
エレフは一人呟き、空を仰いだ。今日は新月で月もなく木々の間にいるせいか星もよく見えない。
―ミーシャはどうなったんだろう…。
気になるのは双子の妹―ミーシャで、それぞれ別の男に連れて行かれ離れ離れになってしまったのだ。行方もわかるはずがない。
そんなどうしようもない考えをぐるぐると考えているうちにエレフは日々の過酷労働や神官からの強制的な羞恥行為の疲労などから深い眠りへと堕ちていった…。
「子供たちをつれて逃げなさい!」
「ミーシャ、エレフこっちへ!」
なつかしい声がする…。父さんと母さんの声が…。
馬車の中…。
「これから私達どうなるのかなあ…。」
「わからない…どうなるのかな。」
馬を操っている人に聞こえないようにとても小さな声で話していた。
「ほぉ、珍しい髪の色したガキが2人もいるじゃねぇか。」
見知らぬ男の声。
「じゃあ俺はあの御方のためにこっちの女の方をもらっていくぜ。」
そういって別の男がミーシャを担ぎ上げた。
「じゃあ、俺はいつも通り働かせるために男共とこの男の方もらっていくぜ。」
そういうと男はエレフの体を担ぎ上げた。
「イヤ!離してー!」
「イヤだ!離せ!」
そうエレフとミーシャはあがいてみたものの所詮大人と子供、どうすることもなく2人の距離はどんどん遠ざかっていく。
「ミーシャァァァァァァァァ!!!」
「エレフーーーーーーーーー!!!」
小さな2人のお互いを呼ぶ絶叫が木霊した。
「ヤァ、息子ヨ。ソンナ世界ハ捨テテ冥府へオィデ…。キットスグニ馴染メルダロゥ。」
…全身が黒いような紫のような不思議な男が手招きをしていた。
何故か男を目の前にしていると悪寒が体中を廻った。