近き夢想空間への鍵

□大切な…
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――――

「ん?あそこに誰かいるなぁ…。」
 闇夜の中オリオンは確かに木々の中に人影を見つけた。

「お?しかもあれってブサイクちゃんか?何でこんなとこに。」
 不思議に思って近づいてみると、そこにはエレフが冷や汗をかき、何やら苦しそうに眠りについていた。

「やっぱりブサイクちゃんだwなんか魘されてるなぁ。これって起こしてやった方がいいよな…。」

 そう思い、オリオンは、エレフの肩をたたきながら声をかけてみた。
「おーい、ブサイクちゃーん。起きろー!!駄目か…。ブサイクちゃーん!!おーい!!
起きろー!!朝だよーーー!!」
 
 オリオンが声をかけてみてもエレフは魘されたまま目を覚まさない。

「はぁ…。おい!!エレフ!目を覚ませ!!エレフ!!」

 
 すると、エレフはハッと目を開き浅い呼吸を繰り返して宙に視線を漂わせていた。

「ふー。やっと起きたか。おはよう、ブサイクちゃんw」
 
オリオンが安堵し声をかけてみるが、返事がない。普段なら『人のこといえた顔かよ』などの言葉が返ってくるハズが返ってこない。
 
 オリオンは軽く不安になり、エレフの顔を覗き込むとエレフの紫水晶色の瞳は、宙を彷徨っていた。

「おい!エレフ!!大丈夫か?」
 まったく返事が来ない。
 口元を見ると、悔しかったのか唇を噛んでしまったような傷跡に血が固まっていた。その唇は何を言っているのかまったく聞き取れないほど微かに動いていた。

 オリオンもエレフもお互いの過去を知らない。聞こうともしないし話そうとも思わない。


 すると、
オリオンはそっとエレフを抱きしめ、
「エレフ、もう大丈夫だよ。」
 そう囁いた。

「俺がいるからもう大丈夫だよ。」
 もう一度力強く囁くと、僅かにエレフが身動ぎ、

「…オリオ…ン?」
 とか細い声で声をかけてきた。
 その声にオリオンは安堵し、軽く息をつき、

「そうだよ、エレフ。魘されてたけど大丈夫か?」
 そう優しく訊ねると、エレフは、びくっと体を強張らせオリオンの服をギュッと握り締めた。よく見ると震えている。
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