*afterschool・1*

□魔法にかけられた神様*野々原陸
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手の届かない所にいる人だと

出会った頃はそう思っていて

調度の距離を綺麗に保って

毎日を

ただ"楽"という感情だけで

受け流していた






その距離が縮まる予感がして

ちょっと歩み寄ってみようと

歩幅を縮めた頃は

指先に彼女の繊維が

触れるか触れないかで

自分の感情すら

もどかしかった








そんな微かな毎日は

小さくても微笑ましくて




その顔を見れば


その声を聞けば


その温もりを感じれば




僕の心は一瞬一瞬を

目に胸に焼き付けていって

頭の中では

シャッター音が

心地良く響いていたんだ

























「本当に真剣に考えたけど、6年の差はやっぱり大きいの」














いつもの様に

距離を保った彼女から

唐突な言葉









僕は先生に

何を伝えたというの?













言葉というものに

気持ちを代弁させた事は

今まで1度たりとてないのに


彼女からの言葉には

まんまに

僕の気持ちが乗っかっていて




あぁ、

もうこれ以上

前には行ってはいけないのだと


この先は

未来に繋がってる訳では

ないのだと




リアルが身体中を

駆け巡った

















本当にあなたはいいオトコよ?






去り際に

彼女の口から漏れた言葉は

きっとちゃんと

彼女の言葉で


それが

どういう意味を持つのかも

ちゃんとちゃんと

理解出来た




困らせたくない一心で

あなたに向けた僕の笑顔は

ちゃんと

笑えていたのかな?






ねぇ先生?

僕の笑顔は

いつもと変わらない?





















帰り道の足取りは

予想外にサイアクで

昨日の雨で出来た水溜まりに

何度も足を捕られて

泣けない僕の代わりに

靴が

僕の心を表した










きっと明日からも

変わらない笑顔で

変わらない距離で

僕はお日様みたいに笑う

きっとそう






けど、


魔法が解けた僕に

闘う力は残ってるかな?




先生を好きだと

叫ぶ力は残ってるかな?












End.

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